ニュース記事を読んでいて、「言っていることは分かる。でも、本当にそうなのだろうか?」と思うことがあります。
書かれている事実そのものが間違っているわけではない。
紹介されている調査結果にも根拠がある。
専門家の主張にも、それなりの説得力がある。
それでも、どこか引っかかる。
記事解剖室は、そんな小さな違和感から始まったブログです。
このサイトでは、ネットニュースを単純に要約することを目的としていません。
記事に書かれていることだけではなく、
- なぜ、この主張になったのか
- 誰に向けて書かれているのか
- 読者に何をしてほしいのか
- どんな前提の上に話が組み立てられているのか
- 逆に、何が書かれていないのか
- 別の立場から見れば結論は変わらないのか
まで考えていきます。
言い換えれば、記事そのものではなく、「記事の後ろ側にある構造」を読む。
それが記事解剖室です。
- なぜニュース記事を「解剖」するのか
- 1.記事は何を主張しているか
- 2.筆者は誰に向けて書いているか
- 3.読者に何をさせたいか
- 4.どんな前提を置いているか
- 5.何が書かれていないか
- 6.記事の有効な部分は何か
- 7.別の立場から見るとどうなるか
- 8.記事解剖室の結論
- 記事解剖室が特に注目しているのは「人の行動がどう変わるか」
- 特に「AIと仕事」を多く扱っている理由
- ニュースを「正解」として読まない
- 記事解剖室は「反対するためのブログ」ではありません
- 情報源について
- AIの利用について
- 記事解剖室で扱うテーマ
- 一つの記事で終わらないことがあります
- 答えよりも、問いを大切にする
- 最終的にこのサイトで考えていきたいこと
- 記事解剖室の基本姿勢
なぜニュース記事を「解剖」するのか
ニュース記事には文字数があります。
読者が記事を読むために使える時間にも限界があります。
そのため、一つの記事ですべての事情を説明することはできません。
たとえば「AIによって人員削減が進んでいる」という記事があったとします。
ここから『AIによって仕事がなくなるのか』という話をすることはできます。
しかし、一段掘り下げると別の疑問が出てきます。
AIを導入した企業は、なぜ削減した人員を別の仕事へ配置しないのでしょうか。
人手不足なのに、なぜ社員を減らすのでしょうか。
新人採用まで減らした場合、10年後の中堅社員や管理職候補はどこから来るのでしょうか。
優秀な社員まで削減すれば、残った優秀な社員は会社を信用し続けるのでしょうか。
さらに、AIによる削減によって会社を辞めた人が起業した場合、その会社自身が未来の競争相手を育てることにはならないのでしょうか。
一つの記事から、いくつもの問いが派生します。
記事解剖室が扱いたいのは、この部分です。
ニュースの続きを読むのではなく、
ニュースの先に何が起こるのかを考える。
そこまで含めて「記事を読む」ことにしています。
記事解剖室の基本フォーマット
記事解剖室では、ニュースを考えるとき、おおむね次の8項目を使います。
1.記事は何を主張しているか
最初に確認するのは、記事が結局何を言っているのかです。
これは単純な要約とは少し違います。
記事には「表面的な主張」と「その主張から導かれる一段深いメッセージ」が存在することがあります。
たとえば、「仕事ができる人は、あえて言わずに相手へ考えさせるようなことをしない」という記事であれば、表面的にはコミュニケーション論です。
しかし、その奥には、職場の暗黙のルールを減らし、必要なことを言語化した方が組織はうまくいく、という組織論が存在しているかもしれません。
記事解剖室では、まずこの構造を整理します。
2.筆者は誰に向けて書いているか
同じ文章でも、想定されている読者によって意味は変わります。
たとえば、
「管理職にはもっと部下へ仕事を任せるべきだ」という記事があった場合、対象読者は、
- 管理職
- 経営者
- 部下を持つ予定の社員
- 部下の立場にいる会社員
など複数考えられます。
さらに、「この記事を読んで一番安心するのは誰か」「逆に、一番反発するのは誰か」まで考えることがあります。
記事は誰に向けて書かれているのか。
ここを確認すると、なぜその論調になっているのかが見えやすくなります。
3.読者に何をさせたいか
記事には情報提供だけでなく、読者の行動を促す役割があります。
たとえば、
- 転職してほしい
- 管理職になってほしい
- AIを導入してほしい
- 働き方を変えてほしい
- ある商品や書籍を購入してほしい
- 今までの価値観を見直してほしい
といったものです。
これは必ずしも悪いことではありません。
ほぼすべての文章には、何らかの目的があります。
重要なのは、その目的を理解した上で記事を読むことです。
4.どんな前提を置いているか
記事解剖室で特に重視している部分です。
どんな主張にも前提があります。
たとえば「成果主義にすれば、働いているフリはなくなる」という主張には、成果を正確に測定できる、という前提があります。
しかし実際の仕事には、
- 部下の育成
- トラブルの予防
- 他部署との調整
- 将来のための準備
- 同僚への支援
- 失敗を防ぐための確認
など、数字にしにくい仕事があります。
すると、「成果主義にすればいい」という主張の是非を判断する前に『そもそも成果とは何なのか』を考える必要が出てきます。
記事解剖室では主張そのもの以上に、その主張を成立させている前提を見ることがあります。
5.何が書かれていないか
記事に書いてあることを読むだけでなく、
書かれていないことを見る。
これも記事解剖室の重要な部分です。
たとえば、「AIを使えば一人あたりの生産性が上がる」という記事があったとします。
確かにその通りかもしれません。
しかし、AIによって8時間の仕事が4時間になった場合、残った4時間は誰のものになるのか。
会社が追加の仕事を与えるのでしょうか。
労働時間が短くなるのでしょうか。
社員の給与が上がるのでしょうか。
人員が削減されるのでしょうか。
生産性向上について説明していても、
生産性向上によって生まれた利益を誰が受け取るのか
について書かれていないことがあります。
そこを考えると、同じ記事でも見え方が変わってきます。
6.記事の有効な部分は何か
記事解剖室は、「ニュース記事の間違いを探すサイト」ではありません。
記事に問題点があったとしても、そこから得られる有効な示唆はあります。
むしろ、
「ここまでは非常に重要な指摘だが、ここから先は別の見方もできる」
という形になることが多いです。
完全に正しい記事も、完全に間違っている記事も、それほど多くありません。
だから、
- どこまでは有効なのか
- どの条件なら成立するのか
- 何について考えるきっかけになるのか
を整理します。
7.別の立場から見るとどうなるか
会社員から見れば不合理でも、経営者から見れば合理的。
経営者から見れば合理的でも、長期的には会社全体に損失を生む。
管理職には必要でも、部下には負担になる。
正社員には有利でも、若者の新規採用には不利になる。
このように、立場が変わると最適解も変わります。
記事解剖室では、
- 社員
- 管理職
- 経営者
- 株主
- 求職者
- 若者
- 会社を辞めた人
- 社会全体
など、可能な範囲で視点を動かします。
特定の立場だけから考えると合理的だった制度が、社会全体では別の結果を生むこともあるからです。
8.記事解剖室の結論
最後に、
「では、ここまで考えた結果どう見るのか」
をまとめます。
ただし、必ず一つの答えを出すとは限りません。
考えれば考えるほど、「これは会社によって違う」「短期と長期で答えが逆になる」「どちらにも合理性がある」という結論になることもあります。
それも一つの答えだと考えています。
重要なのは、
白か黒かを決めることより、なぜ答えが簡単に出ないのかを明らかにすること。
です。
記事解剖室が特に注目しているのは「人の行動がどう変わるか」
このサイトで記事を書き続けているうちに、一つの共通するテーマが見えてきました。
それは、
会社が制度を変えたとき、人はどう行動を変えるのか。
という問題です。
たとえば、仕事を早く終わらせた社員に毎回追加の仕事を与えれば、社員は仕事を早く終わらせなくなるかもしれません。
成果だけを評価すれば、社員は成果指標を攻略するようになるかもしれません。
AIが評価するようになれば、社員はAIに高く評価される行動を研究するかもしれません。
完全出社を強制すれば、社員を会社へ戻すことはできても、積極的に働かせることまではできないかもしれません。
新人採用を減らせば、短期的には人件費を削減できても、10年後には中堅社員や管理職候補が不足するかもしれません。
制度には目的があります。
しかし人間は、その制度に合わせて行動を変えます。
すると、制度を作った側が想定していなかった結果が生まれる。
この「二手目」「三手目」を考えることが、記事解剖室の大きなテーマになっています。
特に「AIと仕事」を多く扱っている理由
現在の記事解剖室では、AIと仕事に関するテーマを多く扱っています。
AIリストラ、AI上司、AIによる人事評価、AIを使った新人教育、AIによる仕事の効率化、AI時代の大企業、AI時代の管理職、AI時代のキャリア。
これには理由があります。
AIは単なる新しい業務ツールではなく、
会社と社員の関係そのものを変える可能性がある技術
だと考えているからです。
たとえば、AIで生産性が2倍になったとします。
ここで本当に重要なのは、「AIはすごい」ということだけではありません。
生産性が2倍になった結果、
- 労働時間を半分にするのか
- 生産量を倍にするのか
- 人員を半分にするのか
- 給料を増やすのか
- 利益を増やすのか
という選択が発生します。
AIは選択肢を増やします。
しかし、どの選択肢を選ぶかを決めるのは人間と制度です。
記事解剖室では、AIそのものより、
AIを使って会社や社会がどんな選択をするのか。
に注目していきます。
ニュースを「正解」として読まない
ネットニュースを読んでいると、専門家のコメント、研究結果、統計、海外企業の事例、著名経営者の発言などが登場します。
もちろん、どれも重要な情報です。
しかし、研究結果があることと、その研究結果から導かれた結論が唯一の正解であることは別です。
ある会社で成功した方法が、別の会社でも成功するとは限りません。
アメリカ企業で成立する制度が、日本企業でも同じように機能するとは限りません。
短期的に合理的な経営判断が、10年後にも合理的とは限りません。
そのため記事解剖室では、
「この記事は正しいか?」
だけではなく、
「どの条件なら正しいのか?」
と考えるようにしています。
記事解剖室は「反対するためのブログ」ではありません
記事を深掘りすると、どうしても批判的に見える部分があります。
前提を疑う。
書かれていない部分を見る。
別の立場から反論する。
これだけ並べると、
「記事にケチをつけるブログなのか」と思われるかもしれません。
しかし、目的は逆です、記事を否定したいのではありません。
一つの記事を入口として、そこから考えられる範囲を広げたいのが目的です。
元の記事に賛成することもあります。
考えた結果、「やはりこの記事の主張は妥当だった」という結論になることもあります。
重要なのは最初から賛成・反対を決めないことです。
情報源について
記事解剖室では、元になったニュース記事だけではなく、必要に応じて、
- 政府・公的機関
- 大学・研究機関
- 論文
- 調査会社
- 企業資料
- 海外報道
- 統計資料
などを確認します。
一つのニュース記事だけから結論を出すと、その記事の前提までそのまま受け入れてしまう可能性があるからです。
特に、「○%の人が~と回答した」「生産性が○%上昇した」「AIによって○万人の仕事が~」といった数字については、可能な範囲で、
- 調査対象は誰なのか
- 何人を調査したのか
- どの国のデータなのか
- いつの調査なのか
- 何と何を比較した数字なのか
を見るようにしています。
数字は便利です、しかし、
数字そのものより、「その数字が何を測っているのか」の方が重要な場合があります。
AIの利用について
記事解剖室では、記事の作成過程でAIを利用しています。
主に、
- 情報の整理
- 論点の洗い出し
- 反対意見の検討
- 海外事例や研究の探索
- 仮説の検討
- 構成の整理
などに使用します。
AIを使う最大の理由は、
一つの問題をより多くの角度から考えるためです。
人間一人で考えていると、どうしても自分の価値観や経験に引っ張られます。
そこで、「経営者側から考えるとどうなるか」「社員側ならどうか」「この前提を外したらどうなるか」「反対意見として最も強いものは何か」
と問い続けることで、考察の幅を広げています。
一方で、AIの回答そのものを「正解」として掲載することを目的にはしていません。
理由は、AIも間違えることがあるからです。
もっともらしい説明を作ることもありますしね。
そのため、最終的に何を問題として取り上げるのか。
どこに違和感を感じるのか、どの論点を残すのか、どういう結論にするのか。
そこについては、このサイトの編集判断として行います。
記事解剖室で扱うテーマ
現在は主に「仕事」に関するニュースを扱っています。
特に、
- AIと仕事
- 人事評価
- 成果主義
- 管理職
- 人材育成
- リストラ
- 人手不足
- 出社回帰
- 静かな退職
- 副業
- キャリア
- 大企業と中小企業
- 会社と社員の関係
などを取り上げています。
一見すると別々の問題に見えます。
しかし、多くは、
会社は社員に何を求め、社員は会社から何を得るのか。
という同じ問題につながっています。
そしてAIの普及によって、この関係が大きく変わり始めています。
記事解剖室では、その変化を一つずつ追いかけています。
一つの記事で終わらないことがあります
記事解剖室では、一つの記事を考察している途中で新しい疑問が生まれ、その疑問を次の記事で取り上げることがあります。
と言うか、このブログは記事数だけで言えば、新しい疑問が湧いて別方向から掘り始める記事の方が多いです(-_-;)
たとえば、「働いているフリ」を考えていたはずが、「なぜ有能な社員ほど能力を隠すのか」という疑問につながる。
そこから、「仕事が早い人に追加の仕事を与えるのは本当に悪いのか」となり、「成果主義なら解決するのか」へ進む、という具合に。
さらにAIが登場すると、
「AIによって仕事が早く終わった時間は誰のものか」
という別の問題につながる。
このように、記事Aの結論が、記事Bの問いになることが多数あります。
これも記事解剖室の特徴です。
そのため、このサイトはニュース記事の一覧というより、
一つの疑問から次の疑問へ進んでいく思考の記録
に近いかもしれません。
答えよりも、問いを大切にする
ネット上にはたくさんの答えがあります。
「これから伸びる仕事」「AIに奪われる仕事」「優秀な社員の特徴」「良い上司の条件」「会社で評価される方法」
もちろん、答えは必要です。
しかし、その答えが成立する条件を考えなければ、
正しい答えでも別の環境では間違いになることがあります。
だから記事解剖室では答えを提示する前にそもそも、この問い方でいいのかを考えることがあります。
たとえば、「AIは人間の仕事を奪うのか」ではなく、「AIによって生産性が上がったとき、その利益を誰が受け取るのか」。
「なぜ若者は管理職になりたくないのか」ではなく、「管理職になることが合理的な制度になっているのか」。
「なぜ社員は頑張らないのか」ではなく、「頑張った社員が報われる仕組みになっているのか」。
問いを変えると、答えも変わります。
最終的にこのサイトで考えていきたいこと
記事解剖室で仕事の記事を取り上げていくと、最終的には一つの大きな問題へ行き着きます。
会社と働く人は、どういう関係であれば長く共存できるのか。
会社には利益が必要です。
利益がなければ雇用を維持できません。
社員にも生活があります。
給与だけでなく、時間、成長、安定、自由、将来性も重要です。
株主には投資した資金へのリターンがあります。
顧客には安くて良い商品を求める権利があります。
どれか一つだけを最大化すると、別のところに負担が移ります。
そしてAIは、これまでのバランスを大きく変える可能性があります。
AIによって仕事が効率化された世界が、働く人にとって余裕のある社会になるのか。
それとも、より少ない人数でより多くの仕事をする社会になるのか。
AIそのものが決めるわけではありません。
会社の制度、社会の制度、そして私たち一人ひとりの選択が決めます。
だからこそ、ニュースで起きている一つ一つの出来事を、「そういうものなのか」で終わらせず、もう一段掘って考えてみたい。
それが記事解剖室を作った理由です。
記事解剖室の基本姿勢
最後に、このサイトの基本姿勢をまとめておきます。
記事をすぐに信じない。
しかし、すぐに否定もしない。
まず、なぜその主張になったのかを考える。
次に、どんな前提が置かれているのかを見る。
そして、書かれていない部分を考える。
さらに、立場を変えて考える。
最後に、それでも、この主張は妥当なのかを考える。
記事解剖室は、ニュースの答え合わせをする場所ではありません。
ニュースを入口にして、「もう一段先まで考えてみる場所」です。
ニュースを読んで「なるほど」で終わるのではなく、「でも、それって本当?」と思ったとき。
その続きを一緒に考えられる場所にできればと思っています。