なぜ本業では最低限しか働かない人が、副業では努力できるのか?

記事解剖

本業では必要最低限の仕事しかしない。

残業は避け、会社から求められた以上のことは積極的にはやらない。

ところが仕事が終わると、自宅で何時間も副業に取り組む。

ブログを書く、動画を作る、商品を販売する、資格の勉強をする、プログラムを書く、SNSを運営する、フリーランスの仕事を受ける。

こういう人を見ると、

本業ではやる気がないのに、副業なら頑張れるのはなぜなのか。

という疑問が浮かびます。

単純に考えれば、

「好きなことだから」「会社が嫌いだから」「お金が欲しいから」

という説明もできます。

しかし、これまで記事解剖室で考えてきた、

  • 「働いているフリ」
  • 有能な社員が能力を隠す組織
  • 仕事の早い人への追加業務
  • 成果主義
  • AIによる生産性向上の利益配分

という問題をつなげて考えると、別の構造が見えてきます。

本業と副業では、

努力によって生まれた利益を、自分がどれくらい回収できるか

が大きく異なります。

本業では、100の努力をしても給与がほとんど変わらないことがあります。

副業では、100の努力が100の収入になる保証はないものの、成功した場合、その成果のかなりの部分を自分自身が受け取れます。

つまり本業で最低限しか働かない人が、副業では熱心に働いているとしたら、

労働意欲そのものが低い

のではなく、

自分の時間と能力を、よりリターンを期待できる場所へ配分している

可能性が高いのではないか、と私は思います。

と言うか、私がこうやってブログ書いているのも、工場で一生懸命働くよりは、こちらの方が稼ぎになるのではないか、と考えているからですが(-_-;)

  1. 本業と副業では「努力した結果」が違う
  2. 本業では「努力」と「報酬」の間に会社が存在する
  3. 本業では効率化の成果を隠した方が得になる場合がある
    1. 本業
    2. 副業
  4. 副業では「頑張らない」という選択すら自分でできる
  5. 「自分で決めた仕事」と「他人から与えられた仕事」の違い
  6. 本業では「成功すると次の基準になる」
  7. 本業では「成果主義」にしても完全には解決しない
  8. 本業では会社の成長と自分の成長が一致するとは限らない
  9. 副業では「努力の所有権」が自分にある
  10. 「会社員は怠けている」という説明では矛盾が残る
  11. これは「キャリアミニマリズム」のもう一つの姿なのかもしれない
  12. 本業の最大の強みは「安定」である
  13. 企業側から見ると、これはかなり深刻な問題である
  14. 企業が副業に負けないためには何を返すべきなのか
    1. 1.時間を返す
    2. 2.給与を返す
    3. 3.成長機会を返す
    4. 4.裁量を返す
    5. 5.キャリアの選択肢を返す
    6. 6.利益の一部を返す
  15. 社内に「副業のような構造」を作ることはできないか
  16. 一方で「最低限しか働かない社員」をすべて正当化してはいけない
  17. 「静かな退職」と副業は同じ現象の表裏なのかもしれない
  18. 本業と副業の最大の違いは「誰のための努力だと感じるか」
  19. 結論:人は「頑張るかどうか」ではなく「どこで頑張るか」を選び始めている

本業と副業では「努力した結果」が違う

まず非常に単純な例を考えてみます。

会社員Aさんは、月給30万円で働いているとします。

仕事を工夫し、通常8時間かかる仕事を6時間で終わらせられるようになりました。

会社にとっては生産性が約33%向上したことになります。

では、Aさんには何が返ってくるでしょうか。

職場によっては、

仕事が早いですね。ではこちらもお願いします。

と、新しい仕事が追加されます(-_-;)

以前の記事「なぜ有能な社員ほど能力を隠す組織が生まれるのか?」では、仕事を早く終えても給与や自由時間が増えず、追加の仕事と責任だけが増える状態では、「能力を出し切らない方が合理的」という学習が起き得ると考察しました。

なぜ有能な社員ほど能力を隠す組織が生まれるのか?仕事が早い人が損をする組織の構造
仕事が早いほど仕事が増え、報酬は変わらない。そんな職場では、有能な社員ほど本当の能力を隠す方が合理的になります。能力隠しが起きる組織の構造と、その副作用を考えます。

実際、現在の記事解剖室でも、能力を100%出した場合と70%に抑えた場合で給与がほぼ同じなら、出力を抑えることが個人にとって合理的になり得ると整理しています。

では、同じAさんが副業をしていたらどうでしょうか。

ブログ記事を月10本書いて1万円稼いでいた人が、工夫して月20本書けるようになった。

動画編集を月5本受注していた人が、AIを活用して10本処理できるようになった。

ネットショップで月10万円売っていた人が、改善によって20万円売れるようになった。

もちろん、作業量が2倍になれば収入も必ず2倍になるわけではありません。

しかし、

成果が増えれば、自分の所得や資産が増える可能性がある

という関係は、本業より目に見えてわかりやすいものです。

この差は大きいでしょう。

本業では「努力」と「報酬」の間に会社が存在する

副業と本業の最大の違いの一つがこれです。

副業の場合、

自分
↓
努力
↓
顧客・市場
↓
売上
↓
自分

という比較的短い構造になります。

一方、会社員の場合、

自分
↓
努力
↓
部署
↓
上司
↓
評価制度
↓
人事
↓
会社業績
↓
給与・賞与

と、かなり長い経路を通ります。

その途中には、

  • 上司の評価
  • 会社の給与体系
  • 年功
  • 役職
  • 部署の予算
  • 会社業績
  • 人事制度
  • 他の社員とのバランス

などが入ります。

そのため、

自分が20%多く成果を出したから、給与も20%増える

とは限りません。

むしろ、多くの会社員にとって給与は急激には変化しません。

ここで、

努力した結果が自分へ戻ってくる感覚

が弱くなります。

副業では結果が悪くても、

自分の判断で失敗した。

と思えます。

会社では成果を出しても、

会社の評価制度では評価されなかった。

ということが起こります。

この「自分でコントロールできる範囲」の違いは、労働意欲にかなり影響するのではないでしょうか。

本業では効率化の成果を隠した方が得になる場合がある

これは記事解剖室で繰り返し扱ってきた問題です。

仕事を早く終わらせると、追加の仕事が来る。

さらに早く終わらせると、それが次からの標準になる……

この状態では、

生産性向上=自分の負担増加

になります。

メリットがないんですよね、社員側には(-_-;)

以前の記事では、会社側にも追加業務を与える合理性があると考察しました。

仕事が早い人に追加の仕事を与えるのは本当に悪いのか?会社側・経営層の視点から考える
仕事が早い人に追加の仕事を与えるのは本当に悪いのか、会社側・経営層の視点から考察した記事になります。

勤務時間に余裕があり、会社全体に仕事が残っているなら、別業務を任せること自体は不自然ではありません。

問題なのは、追加業務が同じ社員へ恒常的に集中しながら、評価・給与・権限・キャリアに反映されないことです。

この環境で社員が考えるのは、

もっと効率化しよう。

ではなく、

効率化しても黙っていよう。

になるでしょう。

実際、私はこれまでの記事でも書きましたが、改善案を提案した際にAIを使ってサクッとまとめた事実を隠しています(-_-;)

言ったら私の負担が確実に増える『だけ』ですので(T‐T)

副業では逆です。

自分の作業を8時間から4時間へ減らせたなら、その4時間でもう一件仕事を受けられます。

あるいは4時間休んでもよい。

効率化によって生まれた利益を、自分自身が選択できます。

つまり、

本業

効率化する
↓
会社が余力を発見する
↓
仕事を追加される

副業

効率化する
↓
余力が生まれる
↓
仕事を増やすか、休むか、自分で決める

という違いがあります。

この差は「努力する気になるかどうか」を大きく左右するでしょう。

副業では「頑張らない」という選択すら自分でできる

副業の魅力は、頑張れば稼げることだけではありません。

逆に、

今日はやらない。

という選択も自分でできます。

会社では、「今日は集中力がないので仕事を半分にします」とは言えませんからね。

しかし副業なら、

  • 今日はブログを書かない
  • 今月は案件を減らす
  • 商品開発を来月へ回す
  • 一週間休む

といった判断ができます。

その代わり、収入が減るリスクも本人が負います。

つまり副業では、

成果だけでなく、努力量そのものについても自分に主導権がある

わけです。

これは単なる金銭的インセンティブ以上に重要かもしれません。

「自分で決めた仕事」と「他人から与えられた仕事」の違い

同じ2時間でも、

上司から「これを今日中にやって」と命令された2時間

と、

自分で「今日は2時間これをやろう」と決めた2時間

では感じ方が違います。

副業には、

  • 何をするか
  • いつするか
  • どれだけするか
  • 誰と仕事をするか
  • どの方法を使うか

を自分で決められる余地があります。

もちろん、顧客がいる副業なら納期や要求もあります。

完全に自由というわけではありません。

それでも、会社員より自分で決められる範囲が広い副業は多いでしょう。

だから、

本業で8時間働いて疲れているのに、帰宅後2時間ブログを書ける

という一見矛盾した現象が起こります。

体力だけを考えれば不思議です。

しかし、

自分で選択した活動だから取り組める

と考えれば、それほど不思議ではありません。

本業では「成功すると次の基準になる」

本業特有の問題として、成功の恒常化があります。

一日10件処理することを期待されている社員が、工夫して15件処理したとします。

会社は喜びます。

しかし翌月から、

この人なら15件できる。

と考えるでしょう。

さらに20件処理すれば、

20件できる人。

になります。

結果として、本人の努力で生み出した上振れが、やがて最低ラインになります。

記事解剖室の「能力を隠す」記事でも、一度高い成果を出すと、それが次回以降の基準になり、能力を発揮するたびに最低ラインが引き上げられる構造を扱っています。

これに対して、副業で売上が、

1万円
↓
3万円
↓
5万円

と増えた場合、それは基本的には本人の資産として蓄積されます。

もちろん翌月5万円を維持するプレッシャーは生まれます。

しかし、そのプレッシャーを引き受けるかどうかも比較的自分で決めやすい。

会社員の場合、

昨日頑張った成果が、今日の義務になる。

副業の場合、

昨日頑張った成果が、今日の選択肢を増やす。

この違いはかなり大きいのではないでしょうか。

本業では「成果主義」にしても完全には解決しない

では会社も副業のように、成果に応じて給与を増やせばよいのでしょうか。

以前の記事では、この問題も考察しました。

成果主義には、

  • 数字になりやすい仕事を優先する
  • 難しい案件を避ける
  • 品質を下げて件数を増やす
  • 他人を助けなくなる
  • 評価指標を攻略する

といった副作用があります。

その結果、時間評価で生じていた「働いているフリ」が、成果評価では「成果を出しているフリ」に変わる可能性があります。

成果主義なら「働いているフリ」はなくなるのか?
時間ではなく成果で評価すれば「働いているフリ」は消えるのでしょうか。成果主義のメリットだけでなく、数字の攻略や短期成果偏重など、新たに生まれる問題を考察します。

副業でも同じ問題は存在します。

アクセス数だけを追えば煽った記事を書くかもしれません。

売上だけを追えば品質を下げるかもしれません。

しかし大きな違いがあります。

副業では、その判断の結果も自分に返ってきますので、品質を落として顧客を失えば、自分の売上が減ることになります。

信用を失えば、自分が困る。

つまり、

行動→結果→自分へのフィードバック

の距離が近いのです。

会社の場合は、この距離が長いため、個人の行動と会社全体の結果が結び付きにくくなります。

本業では会社の成長と自分の成長が一致するとは限らない

さらに重要なのが、

会社が成長すれば、自分も豊かになるのか。

という問題です。

会社の売上が10%増えた。

利益が20%増えた。

社員一人当たり生産性が30%上がった。

それでも社員の給与がほぼ同じなら、

会社の成長

と、

自分の成長

は切り離されています。

一方、副業では、事業が成長すれば基本的には自分の資産や収入も増えます。

そのため、副業に投入する1時間は、

将来の自分のために使っている時間

と感じやすい。

本業の1時間は、

会社のために使っている時間

と感じる場合があります。

会社員が本業で学んだ技術が市場価値を高める場合は、この限りではありません。

ここが重要です。

本業でも、

  • 資格が取れる
  • 専門技能が身につく
  • 管理経験が積める
  • 市場価値が上がる
  • 人脈が広がる

のであれば、自分への投資になります。

つまり会社が、

働けば働くほど、この人自身の資産も増える

環境を作れれば、副業との違いは小さくなります。

副業では「努力の所有権」が自分にある

ここまでの議論を一つの言葉にまとめるなら、

努力の所有権

という考え方ができるかもしれません。

会社員の場合、勤務時間中の労働成果は基本的には会社の事業へ組み込まれます。

本人が素晴らしい改善方法を発見しても、それが会社の標準作業になれば、会社全体の資産になります。

当然、企業はそうした知識や改善を活用するために社員を雇っています。

しかし社員からすると、

自分の工夫によって生まれた利益のうち、自分にはどの程度返ってくるのか。

という問題が残ります。

以前の記事「AIで仕事が早く終わった時間は誰のものか?」では、AIによる生産性向上を会社が100%回収すると、社員には効率化の方法を共有する動機が弱まり得ると考察しました。

記事では、問題を「浮いた時間の所有権」よりも、生産性向上による利益を企業と社員でどう配分するかと整理しています。

AIで仕事が早く終わった時間は誰のものか?
AIで仕事が早く終わった時間は誰のものか、というタイトルで考察しています。

これは副業との違いを考えるうえでも重要です。

副業では、

自分が見つけた効率化
↓
自分の時間が増える
↓
自分の売上を増やす、休む、新しいことをする

と、その大部分を自分でコントロールできます。

だから改善しようとします。

「会社員は怠けている」という説明では矛盾が残る

ここで最初の疑問へ戻ります。

本業では最低限しか働かない。

しかし副業では夜遅くまで仕事をする。

もしその人が本当に、

働くことそのものが嫌いな怠け者

なら、副業でも働かないはず。

にもかかわらず、

  • ブログを毎日更新する
  • 動画を作り続ける
  • 土日に商品を作る
  • 資格を取る
  • 投資について勉強する

のであれば、

労働意欲がない

という説明では足りません。

むしろ、

努力する能力はあるが、それを本業へ投入する理由が弱い

と考えた方が説明しやすいでしょう。

これは「キャリアミニマリズム」のもう一つの姿なのかもしれない

先に取り上げた「キャリアミニマリズム」という考え方ともつながります。

本業では、

安定した収入を得るために必要な水準を維持する。

その一方で、

野心、創造性、挑戦、成長欲求は会社の外で満たす。

これは一見すると、本業への意欲低下です。

しかし本人の人生全体を見れば、必ずしも意欲が低下しているわけではありません。

以前なら、

会社員として成功する

ことに一つの大きな賭けをしていた。

現在は、

本業
副業
投資
資格
個人活動

へ、自分の時間と能力を分散させる。

投資に例えれば、

会社という一銘柄への集中投資をやめ、人的資本を分散投資している

とも考えられます。

会社員としての収入を安定資産にする。

副業を成長資産にする。

資格を将来の保険にする。

AIスキルを転職可能性として持つ。

そう考えると、本業を必要最低限に抑えることが、単純な怠慢ではなく、人生全体のリスク管理になる場合があります。

本業の最大の強みは「安定」である

ただし、ここで副業側だけを美化するのも間違いです。

副業には、

  • 収入が不安定
  • 失敗しても誰も補償しない
  • 顧客を自分で探す必要がある
  • 病気になれば収入が止まる可能性
  • 社会保険や福利厚生が弱い
  • 初期段階では時給換算すると非常に低い

といった問題があります。

だからこそ、多くの人は本業を辞めずに副業をします。

本業には、

毎月ある程度安定した給与が入る

という極めて大きな価値があります。

そのため現代の働き方は、

本業か副業か

という二者択一ではなく、

本業から安定を取り、副業から成長可能性を取る

という組み合わせへ向かっているのかもしれません。

企業側から見ると、これはかなり深刻な問題である

個人にとって合理的でも、企業にとっては困ります。

社員が、

本業では60~70%程度に抑えて、余った能力は副業へ。

と考え始めれば、企業は社員の能力を十分に利用できません。

特に能力の高い社員ほど、

  • AI
  • プログラミング
  • 営業力
  • マーケティング
  • デザイン
  • 発信能力

などを会社外で利用できる可能性があります。

すると企業は、

給与を払っているのに、社員の最も創造的な部分は社外で使われている

状態になります。

経営側からすれば、

会社でもそれくらい頑張ってくれ。

と思うでしょう。

しかし、そこで精神論を言っても解決する訳がありません。

企業側が考えなければならないのは、

なぜこの社員は、夜の副業には2時間全力を投入できるのに、昼間の会社では最低限しか働かないのか。

です。

答えが、

副業の方が自分に利益が返ってくるから。

なのであれば、会社側も制度を変える必要があります。

企業が副業に負けないためには何を返すべきなのか

会社が副業以上の金銭的リターンをすべての社員へ提供するのは現実的ではありません。

しかし給与以外にも返せるものがあります。

1.時間を返す

効率化した社員に、一定の裁量時間を与える。

2.給与を返す

明確な改善成果を賞与などへ反映する。

3.成長機会を返す

高い成果を出した社員に、さらに単純作業を与えるのではなく、本人が望む能力開発へつなげる。

4.裁量を返す

成果を出している社員ほど、仕事の方法や時間配分を任せる。

5.キャリアの選択肢を返す

管理職だけでなく、

  • 専門職
  • プロジェクト職
  • 社内副業
  • 新規事業

などの道を作る。

6.利益の一部を返す

AIや改善による生産性向上が明確なら、社員にも何らかの形で還元する。

重要なのは、

頑張ればもっと仕事をあげます。

ではありません。

頑張れば本人の人生にも何かが残ります。

という関係を作ることです。

社内に「副業のような構造」を作ることはできないか

ここまで考えると、企業にとって一つ面白い方向があります。

副業そのものを禁止したり、社員に忠誠心を要求したりするのではなく、

副業で人が努力できる理由を、会社の中へ取り込む

ことです。

副業には、

  • 自分でテーマを選べる
  • 成果が見える
  • 学習できる
  • 工夫が利益になる
  • 自分の実績として残る

という特徴があります。

ならば会社でも、

  • 社内公募
  • 改善プロジェクト
  • 新規事業提案
  • 社内副業
  • 成果連動型の裁量
  • 個人名で残る実績

などを増やせばよい。

会社の中にも、

自分がやったことが自分の資産になる場所

を作るわけです。

社員に会社のためだけに頑張らせるのではなく、

会社で頑張ることが、社員自身の人生にも利益になる

構造へ変える。

これが、副業へ流れている能力を取り戻す方法の一つではないでしょうか。

一方で「最低限しか働かない社員」をすべて正当化してはいけない

ここまで読むと、

本業で手を抜くのはすべて会社が悪い。

という結論にも見えるかもしれません。

しかし、それも違います。

社員は雇用契約によって一定の仕事を引き受けています。

給与を受け取っている以上、求められた役割を果たす責任があります。

同僚へ仕事を押しつけ、自分だけ副業へ力を注ぐのであれば、それは単なる自己防衛ではなく、他人への負担移転です。

以前の記事でも、会社が勤務時間中の余力を活用し、合理的な追加業務を割り当てること自体には経営上の正当性があると整理していますので、

最低限働く

という言葉も注意が必要です。

契約上求められている仕事をきちんと完成させたうえで、それ以上の「プラスアルファ」を会社へ提供しないことと、契約上必要な仕事まで怠ることは別です。

前者は合理的な働き方として議論できます。

後者は単純な職務放棄に近づきます。

「静かな退職」と副業は同じ現象の表裏なのかもしれない

会社への追加努力を止める。

しかし働く意欲そのものは失っていない。

余ったエネルギーを、

  • 副業
  • 学習
  • 家族
  • 趣味
  • 投資

へ回す。

この行動は、

静かな退職

と、

キャリアミニマリズム

と、

副業増加

を、別々の流行として見るより、

会社へ投入する人的資本の割合を下げる現象

としてまとめた方が理解しやすいのかもしれません。

つまり、

「人が働かなくなった」

のではありません。

会社が、個人の努力を独占できなくなってきた。

と考えることもできます。

本業と副業の最大の違いは「誰のための努力だと感じるか」

本業でも副業でも、人は仕事をしています。

パソコンに向かう、文章を書く、人と話す、商品を作る、問題を解決する。

行動自体に、それほど大きな違いがない場合もあります。

それなのに副業では頑張れて、本業では頑張れない……いや、頑張らない、という表現の方が正確でしょうか。

その差の一つは、

この努力は最終的に誰のものになるのか。

という感覚なのではないでしょうか。

本業で、

自分が頑張る
↓
会社の利益が増える
↓
自分の仕事が増える

という経験を繰り返した人は、努力を抑えるようになります。

副業で、

自分が頑張る
↓
自分の技能・売上・資産が増える

と感じられれば、努力しやすくなります。

この違いを、

最近の社員には根性がない。

だけで片付ければ、企業は重要な原因を見落とすでしょう。

結論:人は「頑張るかどうか」ではなく「どこで頑張るか」を選び始めている

本業で最低限しか働かない人が、副業では努力できる。

この現象を考えるとき、

本業が嫌いだから。

副業が好きだから。

という説明だけでは十分ではありません。

これまで記事解剖室で考えてきた問題をつなげると、もう一つの説明ができます。

仕事を早く終えると追加業務を与えられる。

能力を発揮すると、その能力が新しい最低基準になる。

成果を上げても報酬が十分に変わらない。

AIで効率化しても、浮いた時間を会社がすべて回収する。

このような経験を重ねれば、社員は、

能力を隠す

ようになります。

しかし、その能力そのものが消えるわけではありません。

そこで次に起きるのが、

能力の移動

です。

会社では必要な仕事をこなす。

それ以上の能力は、副業へ、資格へ、投資へ、創作へ、自分自身の事業へ。

つまり、

「会社では頑張らない人」

ではなく、

「会社を自分の努力の最優先投資先にしなくなった人」

と考えると、かなり見え方が変わります。

これは企業にとって非常に重要な変化です。

社員に、

もっと会社のために頑張れ。

と言っても、会社への投資リターンが低いと判断されているなら、行動は変わりません。

企業が考えるべきなのは、

なぜ副業では頑張れるのか。

です。

そこには、

  • 努力と報酬の距離が近い
  • 自分で仕事を選べる
  • 効率化した利益を自分が受け取れる
  • 実績が自分の資産になる
  • 成功すれば将来の選択肢が増える

という構造があります。

ならば企業も、

会社で努力したことが、社員自身の人生にも残る仕組み

を作らなければならないでしょう。

給与でも、時間でも、裁量でも、技能でも、市場価値でも、キャリアの選択肢でもいい。

何かが本人へ返ってくる必要があります。

そうでなければ、社員が会社を安定収入の場所として利用し、自分の成長や野心を会社の外へ移していくのは、個人にとってかなり合理的な戦略になります。

本業で最低限しか働かず、副業では熱心に働く人を見たとき、

「なぜこの人は本業で頑張らないのだろう」

と問うだけでは足りません。

むしろ企業側が問うべきなのは、

「なぜこの人にとって、会社より副業の方が努力する価値のある場所になってしまったのか?」

なのではないでしょうか。

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