「あえて言わない」人ほど、仕事ができない。できる人はどうする? ―記事解剖後編

記事解剖

昨日の記事の続きになりますm(_ _)m

「あえて言わない」人ほど、仕事ができない。できる人はどうする? ――記事解剖
「あえて言わない」人ほど、仕事ができない。できる人はどうする?という記事を読んだ際の要点とその深層を深堀し、どのような事柄が問題なのか考察しています。

【「なんとなく従っているルール」があると気づいたとき、それを言葉にできるかどうかを一度だけ確認してみることだけでいい】以外で出来ることはないか……これを中心に後編をまとめていきます。

このような職場で部下が取るべき基本方針は、

上司を論破して職場を正すことではなく、自分の雇用・収入・健康を守りながら、事実を記録し、会社外も含めた複数の経路で問題を処理すること

です。

記事の主張自体は正しくても、現実の職場では「そのルールはおかしい」と正面から指摘した人が、表向きは別の理由で低評価、配置転換、仕事外し、孤立化などを受ける可能性がある……と言うより、職場に限らず覚えがある人は私以外にもいらっしゃるのではないですか?(-_-;)

法律上、不利益な取り扱いが禁止される場合はあります。

しかし、法律で禁止されていることと、実際に報復が起きないことは別です。

したがって、正しさより順番が重要になります。

1.最初から部長を説得しようとしない

この事例の部長は、

「言語化したら労務的に問題になる」

と自分で理解しています。

つまり、単に知識がないのではありません。

  • 問題性を認識している
  • それでも会社の成長に必要だと思っている
  • 過去の成功体験を正当化している
  • 曖昧なままの方が管理しやすいと理解している

可能性があります。

このような上司に、

「それは違法ではありませんか」
「言っていることが矛盾しています」
「暗黙の支配ですよね」

と正面から言っても、考えを改めるとは限りません。

むしろ上司の側では、

扱いにくい社員
組織に反抗する社員
成果を出さず権利だけ主張する社員

という評価に置き換えられる危険があります。

したがって、最初の目的は上司を改心させることではなく、実態を把握し、自分が不利益を受けた場合に説明できる状態を作ることです。

2.「暗黙のルール」を具体的な事実に分解する

「帰りづらい雰囲気がある」だけでは、外部の人に状況を説明しにくくなります。

そこで、次のように分解します。

  • 成果未達の日に、何時まで残ったか
  • その間に実際の業務を行っていたか
  • 誰が何と言ったか
  • 定時で帰った人がどのような扱いを受けたか
  • 残業申請が認められたか
  • 残業代が支払われたか
  • 人事評価との関係を示す発言があったか
  • 他の社員も同じ認識を持っているか

たとえば、

8月3日18時5分ごろ、営業部長から「今日は数字が出ていないのに帰るのか」と言われ、20時まで顧客リストの作成を行った。勤怠記録は18時退勤に修正するよう指示された。

まで具体化できれば、単なる「雰囲気」の話ではなくなります。

厚生労働省は、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と説明しており、明示的な命令だけでなく、黙示の指示によって業務に従事した時間も労働時間になり得ます。

したがって、「残れとは明言していない」という会社側の説明だけで、直ちに労働時間でなくなるわけではありません。

3.私的な記録を、会社の管理外に残す

最も重要な対策の一つ、と私は考えています。

記録は会社のパソコンや会社支給スマートフォンだけに置かず、自分で適法に管理できる場所にも残します。

記録する項目は、次のようなものです。

  • 日付と時刻
  • 場所
  • 発言者
  • できるだけ正確な発言内容
  • その場にいた人
  • 実際の退勤時刻
  • 行った業務
  • 勤怠上の記録
  • 残業代の有無
  • 定時退社後に起きた評価・配置・言動の変化
  • 心身の症状

証拠になり得るものとしては、

  • タイムカードや勤怠画面
  • 入退館記録
  • 業務メールやチャット
  • 日報
  • パソコンのログ
  • 業務を行った成果物
  • 給与明細
  • 自分で作成した時系列メモ

などがあります。

ちなみに、私は『これは後々問題になるかもな』と思えた出来事が発生した日は、通常の日記と共に併記していますね(-_-;)

厚生労働省も、労働時間を確認する資料として、タイムカード、入退場記録、パソコンの使用記録などの客観資料を挙げています。

ただし、顧客情報や営業秘密を無断で大量に持ち出すことは、別の問題を生みます。

必要なのは「会社の機密を集めること」ではなく、自分の勤務実態と受けた指示を証明する範囲で記録することです。

4.最初の確認は「反抗」ではなく「事務的な質問」にする

何も言わず残り続ける必要はありません。しかし、最初から告発調にする必要もありません。

たとえば、次のように確認します。

本日の業務について確認させてください。営業成果が未達の場合は、18時以降も業務を継続するという認識でよいでしょうか。

あるいは、

18時以降も顧客対応を続ける場合、残業申請はどのように行えばよいでしょうか。

ポイントは、相手の人格や文化を批判せず、

  • 業務命令なのか
  • 何時までなのか
  • 何を行うのか
  • 勤怠処理をどうするのか

を確認することです。

口頭で指示された後は、

本日ご指示いただいたとおり、営業成果未達のため20時まで顧客リストの整理を行います。残業申請については〇〇の方法で処理します。

とメールや業務チャットで確認できれば、記録が残ります。

上司が書面での回答を避ける場合も、それ自体が重要な情報です。

ただ、これはリスキーな対応かなと個人的には思っているので、オススメはしない対応です。

もう次の職場が決まっている、という場合はいいかもしれません。

5.一人で英雄的に戦わない

こうした暗黙ルールは、一人の部下と部長の争いにされると、部下側が不利になります。

可能であれば、信頼できる同僚と事実認識を確認します。

ただし、

部長を追い落とそう
みんなで告発しよう

と最初から徒党を組むのは危険です。上司へ伝わった時点で、首謀者探しが始まる可能性があります。

確認するのは、まず事実です。

  • 自分だけが残っているのか
  • 他の人も同じ発言を受けたのか
  • 定時退社した人に不利益があったのか
  • 残業代はどう処理されているのか

同じ経験をした人が複数いる場合でも、誰が会社に相談するか、実名を出すかは慎重に決める必要があります。

6.社内相談窓口は「独立性」で判断する

次の候補は、一般的には以下です。

  • 部長より上位の管理職
  • 人事・労務部門
  • コンプライアンス窓口
  • 内部通報窓口
  • 労働組合
  • 産業医・保健師
  • ハラスメント相談窓口

ただし、窓口があるだけで安全とは限りません。

確認すべきなのは、

  • 誰が相談内容を読むのか
  • 部長本人や直属の役員に直結していないか
  • 匿名相談が可能か
  • 相談者の氏名をどこまで共有するか
  • 調査時に本人の同意なく氏名を出さないか
  • 相談後の不利益を監視する仕組みがあるか

です。

小さな会社では、人事部長と問題の営業部長が親しい、あるいは経営者自身が暗黙ルールを支持していることもあります。

その場合、内部相談が直ちに解決につながるとは限りません。

内部通報制度が公益通報者保護法の対象になる場合、通報を理由とした解雇、降格、減給、配置転換、嫌がらせなどは禁止され得ます。

また、一定規模以上の事業者には、通報対応体制の整備などが求められています。

ただし、すべての職場上の不満が同法の「公益通報」に該当するわけではなく、通報内容や通報先によって保護要件も異なります。

内部通報しても、逆につるし上げられてしまった事例もありますからね(-_-;)

7.社内へ出す文書は「感情」ではなく「事実・影響・要望」にする

相談文は、次の三段構成が安全です。

事実

営業成果が未達の日には、定時後も残ることが事実上求められています。〇月〇日には、定時退社を申し出た際に「数字が出ていないのに帰るのか」と言われ、〇時まで業務を続けました。

影響

退勤の基準と残業申請の扱いが明確でなく、社員ごとに判断が異なっています。また、定時退社が人事評価へ影響するのではないかという不安があります。

要望

成果未達時の勤務時間、残業命令、残業申請、人事評価の基準を文書で明確にしていただきたいです。また、相談を理由とする不利益な取り扱いが生じないよう配慮をお願いします。

「部長は無能だ」「違法企業だ」「暗黙の支配だ」と書くより、こちらの方が会社側も無視しにくくなります。

8.外部相談は、社内告発の前でも利用してよい

外部機関への相談は、会社との全面対決を意味しません。

正式な申告をする前に、

この状況は何が問題になり得るのか
どの記録が必要か
社内へどう確認すべきか
匿名性はどこまで守られるか

を相談するだけでも意味があります。

総合労働相談コーナー

解雇、配置転換、賃金引下げ、いじめ、嫌がらせ、パワハラなど、幅広い労働問題を無料で相談できます。

電話・面談に対応し、必要に応じて助言・指導やあっせん、権限を持つ部署への取り次ぎが案内されます。

相談者のプライバシーにも配慮するとされています。

労働条件相談ほっとライン

労働時間、残業代などについて、平日夜間や土日・祝日にも無料で相談できます。現役社員が勤務先に知られない形で、最初の整理をする際に使いやすい窓口です。

労働基準監督署

未払い残業、違法な労働時間管理など、労働基準関係法令違反の疑いが具体的にある場合の相談・申告先です。

労働基準法104条は、労働者が法違反の事実を行政官庁または労働基準監督官に申告できること、そして申告を理由とする解雇その他の不利益な取り扱いを禁止しています。

ただし、会社が別の理由を掲げて報復的に動く可能性までは消せません。

そのため、申告前から勤務評価や指示の記録を残しておくことが重要です。

労働組合・合同労組

社内組合が機能していない、または組合がない場合でも、個人で加入できる地域合同労組などがあります。

一人で会社と交渉するより、団体交渉という形を取れる点は強みです。ただし、組合ごとに方針や得意分野が異なるため、加入前に費用や対応方針を確認する必要があります。

弁護士

すでに降格、減給、解雇示唆、退職強要、深刻な嫌がらせが始まっている場合は、一般相談だけでなく、労働問題を扱う弁護士への相談が現実的です。

9.報復は「一見、普通の人事」として起こる

報復は、露骨に、

労基署へ相談したから降格する

とは言われないのが普通です。

実際には、次のような形を取り得ます。

  • 急に評価が下がる
  • 重要な顧客を外される
  • 雑務だけを与えられる
  • 会議から外される
  • 希望しない部署へ異動させられる
  • 小さなミスだけ厳しく追及される
  • 周囲に「協調性がない」と伝えられる
  • 自主退職を促される
  • 契約社員なら更新されない
  • 同僚との接触を減らされる

したがって、相談前後で比較できるように、

  • 過去の人事評価
  • 表彰や営業成績
  • 上司からの肯定的なメール
  • 担当業務
  • 目標達成状況
  • 勤怠状況
  • 注意・指導を受けた履歴

も保管しておく必要があります。

相談後に急に評価が変わった場合、「以前から能力不足だった」という会社の説明と比較できるからです。

10.自分の行動に隙を作らない

会社側との緊張が高まった後は、本人の小さな規律違反が大きく扱われる可能性があります。

そのため、

  • 遅刻や無断欠勤をしない
  • 指示には原則として対応する
  • できない指示は理由を明確にする
  • 感情的なメールを送らない
  • SNSに会社名や関係者が推定できる投稿をしない
  • 暴言や挑発に反応しない
  • 業務成果を記録する
  • 就業規則を確認する

ことが重要になってきます。

これは会社に服従するという意味ではなく、争点を暗黙ルールの問題から、自分の勤務態度の問題へすり替えさせないために必要な行動です。

11.健康が悪化したら、問題解決より退避を優先する

長期間、上司の顔色を読み続ける職場では、

  • 睡眠障害
  • 出勤前の動悸
  • 食欲低下
  • 頭痛や腹痛
  • 集中力低下
  • 強い無力感
  • 休日にも仕事が頭から離れない

といった状態になることがあります。

この段階で「証拠がそろうまで耐える」と考えるのは危険です。

医療機関を受診し、症状と職場状況を伝え、診療記録を残します。産業医がいる場合も利用できます。

健康を壊してまで会社を正す義務はありません。

有給休暇、休職、配置転換の申出、転職準備を含め、戦うことではなく離脱することが最善のケースもあります。

12.転職準備は「敗北」ではなく交渉力になる

会社に残りたい場合でも、転職準備は進めた方がよいでしょう。

自分の選べる選択肢は一つでも増やした方が良いです。

  • 履歴書・職務経歴書を更新する
  • 自分の実績を数値化する
  • 求人相場を調べる
  • 資格・スキルを棚卸しする
  • 生活防衛資金を確認する
  • 退職した場合の社会保険や失業給付を調べる

逃げ道がない状態では、上司の圧力に従わざるを得ません。

反対に、

最悪の場合は別の職場へ移れる

という選択肢があれば、冷静に判断できます。

ただし、退職届を出す前に未払い残業代や証拠、会社との交渉方針について外部へ相談した方がよい場合があります。

現実的な対処の順番

私なら、危険度の低い順に次のように動きます。

第1段階:観察と記録

2~4週間程度、実際の退勤時刻、指示、業務内容、勤怠処理、残業代を記録します。ただし、心身に危険があるなら期間を置かず相談します。

第2段階:制度の確認

就業規則、賃金規程、残業申請、評価制度、ハラスメント窓口、内部通報制度を確認します。

第3段階:外部への匿名・一般相談

会社名を出す正式申告の前に、総合労働相談コーナーや労働条件相談ほっとラインなどへ状況を説明し、論点と必要資料を整理します。

第4段階:事務的な確認

上司へ、業務命令、退勤基準、残業申請方法を書面で確認します。人格批判や違法断定は避けます。

第5段階:社内の独立した窓口

人事、コンプライアンス、上位役職者、組合などから、問題の上司と利益関係が比較的薄い経路を選びます。

第6段階:報復監視

相談前後で、評価、担当、配置、発言、処分の変化を記録します。

第7段階:外部への正式対応

未払い賃金や労働時間の法令違反なら労働基準監督署、個別の労使紛争なら労働局の助言・指導やあっせん、重大な不利益が始まったら労組・弁護士を検討します。

第8段階:撤退判断

会社の経営層まで暗黙ルールを支持し、改善可能性が低い場合は、健康と生活を守るため転職・休職・退職を選択します。

が、正直に言いますと……初手でこれを選ぶのが最もコストパフォーマンスに優れている可能性があります(-_-;)

第1から第7段階までの行動って時間も精神力も手間もかかるんですよね。

そういうのがダルイ、コストパフォーマンスが悪い、と感じる方はスッパリ転職活動に勤しむことをオススメしますm(_ _)m

世の中、悪い職場は結構ありますが、私の経験上では、しっかり吟味すれば、『……まぁ、今の職場よりはずっといいか』と妥協出来る職場には行きつけるかと思いますので(-_-;)

記事解剖室としての結論

元の記事は、

暗黙のルールを言語化しよう

と提案しています。

しかし、部下の立場から見ると、言語化は単純な解決策ではありません。

部下が暗黙のルールを言葉にした瞬間、上司にとっては、これまで責任を負わずに使えていた管理手段が脅かされます。そのため、上司が問題を認めるのではなく、問題を指摘した部下を排除しようとする可能性があります。

したがって、現実的な結論は次のようになります。

暗黙のルールに気づいても、最初から上司を正面から論破してはいけない。
まず、そのルールがどのような言動・勤務時間・評価として現れているかを記録する。
次に、外部を含む安全な相談経路で問題を整理し、事務的な確認、社内相談、正式な申告の順に段階を上げる。

そして最も重要なのは、職場を正す責任を一人の部下が背負わないことである。
組織が改善しない場合、証拠と生活基盤を確保して離れることも、十分に合理的な対処である。

「声を上げる勇気」だけを部下に要求すると、会社が負うべき改善責任を、再び部下個人へ押し付けることになります。

必要なのは勇敢さより、記録・相談・退路を組み合わせた慎重な自己防衛。

そして、そういうのが手間だと感じる方はスッパリ転職活動に勤しむ……私としてはこの二択かなと感じています。

ちなみに、私がしている行動としては転職活動を含めたハイブリッド型になります。

今の職場は妥協は出来る範囲内ですが、異動してから色々と怪しい点が出てきているので(-_-;)

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