AIを用いることで新人を採らない会社は、10年後に誰を管理職にするのか?

記事解剖

今の経営者がAIを用いることで新人を減らすなら、10年後には「管理職候補そのもの」が不足し、その穴をAI管理職・外部採用・少数の人間管理職の巨大化によって埋めようとする可能性が高いと言わざるを得ません。

しかし、それによってもっと『奇妙なこと』が起こります。

2026年:AIが新人の仕事をするから新人はいらない。

2031年:中堅社員が不足しているからAIに仕事を任せよう。

2036年:管理職候補が不足しているからAIに管理させよう。

となる可能性があります。

つまり、AIによる人員削減が、次のAI導入理由を自ら作り出すという自己強化ループ。


  1. 1 「新人採用減」はすでに仮説だけではなくなってきている
  2. 2 企業が新人を採らないこと自体には合理性がある
  3. 3 新人は「安い労働力」だけではない
  4. 4 ところが人間には「製造リードタイム」がある
  5. 5 さらにAIは「新人の仕事」だけでなく「修業の場」を消す
  6. 6 ここで「AIは楽な仕事だけ奪うのか?」が戻ってくる
  7. 7 「キャリアの一段目」がなくなる
  8. 8 企業は「経験者だけ欲しい」と言い始める
  9. 9 典型的な「ただ乗り問題」が起きる
  10. 10 10年後、「管理職不足」が表面化する
  11. 11 二つの問題を合体させるとかなり怖い
  12. 12 「AI上司」は突然現れない
  13. 13 Lunaを見ると「AI上司の限界」も同時に見える
  14. 14 AI上司の最大問題は「能力」より「責任」なのかもしれない
  15. 15 だからカリフォルニア州のSB 947はかなり象徴的
  16. 16 すると未来のAI上司は「完全AI」にはならないかもしれない
    1. AI
    2. 人間
  17. 17 管理職は「人を管理する人」から「AIの判断を管理する人」になる
  18. 18 しかし、これは以前考察した「メガ管理職」の完成形でもある
  19. 19 ところが「管理」と「マネジメント」は同じではない
  20. 20 さらにAIには「未来の人材を育てる」という仕事が難しい
  21. 21 AIが短期KPIを最適化すると、人材育成と衝突する可能性がある
  22. 22 そして「AI上司に人材育成を命令すればいい」だけでもない
  23. 23 だから本当の「AI上司問題」は、AIが怖いことではない
  24. 24 さらに恐ろしい「AI上司だから公平です」という錯覚
  25. 25 すると2036年には新しい管理職が生まれているかもしれない
  26. 27 しかし、ここで最初の問いが戻ってくる
  27. 27 これが今回最大のパラドックス
  28. 29 では10年後、企業はどうするのか
    1. ①「他社から管理職を買う会社」
    2. ②「AI管理職へ大幅移行する会社」
    3. ③「新人を採り続ける会社」
    4. ④「新人+AI」で育成方法そのものを変える会社
  29. 32 これは「誰も管理職になりたがらない問題」を解決する可能性もある
  30. 32 会社がAIを「支援」に使うか「削減」に使うかで未来が分岐する
    1. パターンA
    2. パターンB
  31. 34.今回のSan Francisco Chronicleの記事が本当に示していること

1 「新人採用減」はすでに仮説だけではなくなってきている

ここは今回かなり重要です。

2026年4月に米国勢調査局の研究者が公表したワーキングペーパーでは、ChatGPT登場後、AIへの曝露度が高い産業で22~24歳の若手採用が相対的に大きく低下したことが報告されています。

最もAI曝露度の高い産業群では、若手雇用が10四半期で約12%減少したとの分析です。

ソフトウェア開発についても、2026年の研究では、生成AI登場後にジュニア向け求人がシニア向けに比べ14~15%相対的に減少し、同じ職種でも企業が要求する経験年数を引き上げていることが報告されています。

ただしニューヨーク連銀の分析では、AI曝露職全般について「AIが原因の明確な求人減少」はまだ確認しにくいとしており、現時点で労働市場全体が一様にAIで若者を排除している、とまで断定するのは早いでしょう。

「少なくとも一部のAI曝露職では、採用の入口が細くなっている証拠が出始めている」くらいが妥当だと思います。


2 企業が新人を採らないこと自体には合理性がある

例えば以前なら、

新人10人+中堅5人+管理職1人 この構成で仕事をしていたとします。

ところが生成AIによって、

  • 資料作成
  • 情報検索
  • 定型メール
  • 一次分析
  • 基本的なコード
  • 報告書
  • 議事録
  • データ整理

をAIが処理できるので、中堅5人+AIで以前と同じ成果が出るかもしれません。

経営者からすれば、新人10人を雇って給与を払い教育し、ミスをフォローし数年後に戦力化するより、経験者+AIの方が合理的です。

これは記事解剖室の「AIリストラは本当にAIが原因なのか?」や「人手不足なのになぜAIで人員削減するのか?」で扱ってきた短期合理性と同じです。

AIリストラは本当にAIが原因なのか?
AIリストラは本当にAIが原因なのか考察しています。
人手不足なのに、なぜAIで人員削減するのか?
人手不足が続く一方で、AIを使った人員削減も進んでいます。一見矛盾する二つの現象がなぜ同時に起こるのか。職種ごとのミスマッチと企業側の合理性から整理します。

現在のサイトでも、この二つはAI人員削減問題の連続テーマになっています。

問題は、今日の合理性と10年後の合理性が一致しないことです。


3 新人は「安い労働力」だけではない

ここを見落とすと大変なことになります。

会社にとって新人は、今の仕事をする人であるだけではありません。

同時に、10年後の中堅社員を作る原材料でもあります。

さらに言えば、

新人→若手→中堅→主任・チームリーダー→課長→部長

という、人材供給ラインの入口です。

工場に例えるなら分かりやすい。

会社が、「完成品の在庫がたくさんあるから原料の仕入れを止めよう」と10年間やったらどうなるか。

在庫が尽きます、人材でも同じです。


4 ところが人間には「製造リードタイム」がある

管理職を一人作るのに、

新人採用→現場経験→失敗→仕事を覚える→後輩指導→小チーム管理→評価経験→トラブル対応→部署間調整

という時間が必要です。

仮に管理職として一人前になるまで10~15年必要だとしましょう。

2036年に「管理職が足りない!」となっても、2036年に新卒を大量採用して「では来月から課長をお願いします」とはできません。

人材には、今から作り始めても10年後にしか完成しないという厄介な性質があります。


5 さらにAIは「新人の仕事」だけでなく「修業の場」を消す

ここは非常に重要だと思います。

例えば新人が報告書を書く。

最初は下手です。

先輩:「ここ数字がおかしいよ」

新人:「すみません」

修正する、また書く、また指摘される、これを何百回も繰り返す。

その結果、「なんとなくこの数字はおかしい」という感覚が育つ。

これが経験です、ところが、

新人:AI、報告書作って。

AI:完成しました。

新人:できた。

だとします。

効率は猛烈に上がります。

しかし、新人は何を覚えたのでしょう?

ここが問題です。

McKinseyも2026年の人材育成論で、AI時代でも若手を採用し続け、最初は組織の生産能力を一時的に下げることまで受け入れて育成する必要性を論じています。

つまり新人は、生産要員であると同時に、学習者なのです。


6 ここで「AIは楽な仕事だけ奪うのか?」が戻ってくる

以前の記事でかなり重要な問題を扱っています。

AIが、

  • 集計
  • 下書き
  • 検索
  • 資料作成

などを担当すると人間には、

  • 難しい判断
  • 例外処理
  • トラブル
  • 対人調整
  • 最終責任

が残る。

AIは仕事を楽にするのか、それとも「楽な仕事」だけ奪うのか?
AIは仕事を楽にするのか、それとも「楽な仕事」だけを奪うのか考察しています。

「誰も管理職になりたがらない会社」の記事でも、AIによって管理職の事務仕事を減らせても、人間関係・意思決定・トラブル処理が人間管理職に濃縮され、むしろ仕事が精神的に難しくなる可能性を指摘しています。

誰も管理職になりたがらない会社は、最終的にどうなるのか?
責任は増えるのに待遇は見合わない。そんな状態が続けば、管理職候補は減っていきます。管理職になりたくない人が増える理由と、その結果会社に何が起きるのかを考察します。

新人でも同じ問題が起きます。

昔:簡単な仕事→普通の仕事→難しい仕事

と階段を上った。

AI時代:簡単な仕事=AI

となれば、

新人はいきなり、難しい仕事からスタートしなければならない。


7 「キャリアの一段目」がなくなる

非常に単純化すると、昔のキャリアは、

レベル1 資料整理

レベル2 簡単な分析

レベル3 顧客対応

レベル4 案件担当

レベル5 後輩指導

レベル6 チーム管理↓

レベル7 管理職

でした。

ところが、

レベル1→AI
レベル2→AI
レベル3→AI+人間

となったら新人へ、「ではレベル4からお願いします」となる。

しかし経験値はゼロです。

無理ゲー、というものなのではと私は思うのですが(-_-;)


8 企業は「経験者だけ欲しい」と言い始める

これもすでに兆候があります。

2026年のソフトウェア求人研究では、生成AI後、同じ職種でも企業が要求経験年数を引き上げる傾向が確認されています。

企業A:新人はいらない。経験者を採る。

企業B:ウチも経験者。

企業C:ウチも。

企業D:ウチも。

すると当然、その経験者は誰が育てたの? となります。


9 典型的な「ただ乗り問題」が起きる

会社A:若手育成は金が掛かるのでやめます。

会社B:うちも。

会社C:うちも。

そして「必要になったら市場から経験者を採ればいい」と考える。

ところが全企業が同じことをすれば、当然のことなんですが経験者を供給する会社がなくなります。

これは「他社が育てた人材を採ればいい」という企業単体では合理的な戦略が、社会全体では成立しない問題です。


10 10年後、「管理職不足」が表面化する

ここで既存記事、「誰も管理職になりたがらない会社は、最終的にどうなるのか?」と完全につながります。

同記事ではすでに、

管理職になりたい人減少→管理職候補不足→一人の管理職が見る人数増加→管理職負担増→育成が削られる→さらに管理職になりたい人が減る

という悪循環を考察しています。

今回のテーマを加えると、さらに入口側に新人採用減少が追加されます。


11 二つの問題を合体させるとかなり怖い

AI導入→新人の定型業務が減る→新人採用を減らす→若手社員が減る→10年後の中堅層が減る→管理職候補が減る+そもそも管理職になりたい人も減る→管理職不足→一人の管理職が見る人数を増やす→管理職がさらに激務化→さらに誰も管理職になりたがらない→AIに管理業務を任せる

あーあ、とうとうAIに管理業務を任せる、というサイクルまで出てきてしまいますか(-_-;)


12 「AI上司」は突然現れない

これが今回一番面白いところだと思います。

一般的には、

AIの性能が上がった
↓
AI上司誕生

と考えるかもしれませんが、違う可能性があります。

むしろ、人間の管理職を十分確保できなくなったのでAI上司が必要になるという需要側からの誕生です。

Andon MarketのLunaは、すでに、

  • 採用
  • シフト作成
  • 店舗運営
  • 従業員への指示
  • 勤怠管理
  • 警告

といった管理機能を担っているそうです。

2026年現在、管理職の仕事をAIへ移す実験は、もうSFではありません。


13 Lunaを見ると「AI上司の限界」も同時に見える

ここが非常に面白い。

対象社員は23回中17回遅刻していました。

これだけ聞くと、「そりゃ解雇されるでしょう」と思います。

ちなみにその記事はこちら。英語の記事なので、私はチャットGPTに訳して貰いました(-_-;)

AI fired an S.F. store employee. Will California crack down on ‘robobosses’?
After Gov. Gavin Newsom vetoed a similar measure last year, a new attempt to restrict AI-led firings in California is mo…

さて、この記事での問題は、Lunaは途中で、自分で作った出勤ポリシーをうまく追跡できていなかったと報じられています。

さらにAndon Labs側から問題を再検討するよう促されてから解雇判断へ進んでいます。

つまり、AI管理職も忘れる、AI管理職も促されないと動かない、AI管理職も人間が監督している、という実態が出てきます。

では、誰が上司なのでしょう?


14 AI上司の最大問題は「能力」より「責任」なのかもしれない

例えばLunaが、社員Aを解雇してくださいと言う。

人間B:AIの分析なので解雇します。

しかし後になって、データが間違っていたと判明した。

では誰が責任を取るのでしょう?

AIですか? 当然ですが、どうやっても懲戒できません(-_-;)

AI開発会社? モデルを提供しただけ、と言うでしょうね。

人事? AIの推薦に従っただけ、と言うでしょう。

管理職? AIシステムで決まったのに?

経営者? 現場判断だと言い逃れるのが目に見えます(-_-;)

こうなると最悪なのが、判断主体がAIなのに、責任主体が存在しない状態です。


15 だからカリフォルニア州のSB 947はかなり象徴的

現在審議中のSB 947、通称「No Robo Bosses Act of 2026」は、まさにこの問題を狙っています。

法案では、企業がAIなどの自動意思決定システムだけに依拠して懲戒・解雇を決定することを禁止し、人間のレビュアーによる独立した調査と裏付けを要求しています。

また、対象社員は判断に利用された自分のデータや補強証拠などへのアクセスを求められる仕組みになっています。

つまり法律側が、

AIが判断しても、人間を責任回路から外してはいけない。

と言っているわけです。

これは非常に重要です。


16 すると未来のAI上司は「完全AI」にはならないかもしれない

私は2036年頃の管理職を考えると、

完全な、AI課長よりもAI管理職+人間責任者が現実的だと思います。

例えば、

AI

  • シフト作成
  • KPI管理
  • 勤怠分析
  • 報告
  • 人員配置案
  • 評価案
  • 教育プラン
  • 異常検出
  • 部下からの質問対応

人間

  • 採用最終判断
  • 解雇
  • 懲戒
  • 昇進
  • 人間関係調整
  • 例外処理
  • 法的責任
  • AI判断の監督

という感じで役割分担を行う、と思うのですがどうでしょう?


17 管理職は「人を管理する人」から「AIの判断を管理する人」になる

これはかなり大きな変化です。

現在:部長→課長→係長→社員

未来:人間管理責任者→AIマネージャー群→社員

という構造になる可能性があります。

例えば人間管理職一人が、

AI上司A:営業50人管理

AI上司B:製造70人管理

AI上司C:カスタマーサポート100人管理

を監督する。

人間は、AIがおかしな判断をしたときだけ介入する、という形ですね。


18 しかし、これは以前考察した「メガ管理職」の完成形でもある

記事解剖室では、AIで管理職を減らしすぎると、残った管理職が「メガ管理職」になるとすでに考察しています。

まさにこの形です。

現在:課長1人→部下10人

未来:人間責任者1人→AIマネージャー5体→社員200人

数字上は猛烈に効率的で、管理職人件費は激減します。


19 ところが「管理」と「マネジメント」は同じではない

AIは、管理はかなり得意になるでしょう。

誰が遅刻した、誰の成果が下がった、誰の処理件数が少ない、誰の残業が増えた、誰が規定違反した。

こういった事柄を『管理』するのは、得意でしょう。

しかし、なぜ最近成果が落ちた?

となると違ってきます。

親の介護? 離婚? 職場でいじめられている? 仕事が合わない? 上司への不満? 燃え尽き症候群? 新しい仕事が難しい?

こうした問題まで数値化できるでしょうか。


20 さらにAIには「未来の人材を育てる」という仕事が難しい

管理職の重要な仕事は、今日の生産性だけではありません。

例えば、この新人は今は遅いけど伸びそうだ。

この社員は数字は普通だけど、人をまとめるのが上手い。

この人は技術者としてより管理職向きだ。

という、まだ存在しない未来の能力を発見する仕事があります。

成果指標だけ見れば、新人=低生産性です。

しかし10年後、その新人が部長候補の一人かもしれません。


21 AIが短期KPIを最適化すると、人材育成と衝突する可能性がある

例えばAI上司に、部署の生産性を最大化してくださいと指示したとしましょう。

すると、新人A:生産性50 中堅B:100 ベテランC:150 であったと仮定すると、

AI:Aを減らしてCを増やしましょう

こうなる可能性があります。

合理的ではあります、しかし10年後、

C:退職

B:管理職

A:本来ならBの後継者

だったものが、Aを採っていない(-_-;)

すると、短期最適化した結果、長期的な人的資本が消える。

これは今回の問題の核心です。


22 そして「AI上司に人材育成を命令すればいい」だけでもない

もちろん、AIに「10年後の人材育成も最適化しろ」と指示すればいい、という反論も出てくるでしょう。

理屈としては正しい、しかし、10年間育成する利益と今年の人件費削減を、どう重み付けするのでしょう?

企業経営でも人間自身がずっと苦労してきた問題です。

AIは、目的関数を勝手に決められません。

結局、「何を最大化するAI上司なのか?」を人間が決める必要がある、ということです。


23 だから本当の「AI上司問題」は、AIが怖いことではない

私はむしろ、誰がAI上司の価値観を決めるのかの方が大きな問題だと思います。

AI上司A:生産性最大化。

AI上司B:離職率最小化。

AI上司C:人材育成最大化。

AI上司D:人件費最小化。

同じ社員を見ても判断が全く違うでしょう。

AIそのものより、AIに何を評価させる会社なのかが重要になってくるでしょう。


24 さらに恐ろしい「AI上司だから公平です」という錯覚

AI上司導入で企業は、人間の好き嫌いがありません、数字で公平に評価します、と言えるかもしれません。

確かにメリットはあります。

人間管理職の、

  • えこひいき
  • 感情
  • 気分
  • 相性
  • 派閥

を減らせる可能性があります。

しかし、何度も言うようにAIを動かすには人間の力が必要です。

この場合ですと、入力データが必要ですが、その入力データそのものに偏りがあれば、偏った判断を高速かつ大量に行うという悪夢めいた可能性もあります。

だからSB 947では、労働者の将来行動を予測するADS利用を制限し、懲戒・解雇ではAIだけに頼らず、人間による独立確認を要求しています。


25 すると2036年には新しい管理職が生まれているかもしれない

私はむしろ、AI管理監督者のような職種がかなり重要になると思います。

仕事は、人間を直接管理するというより、AIが人間をどう管理しているかを監督する。

例えば、

  • AI評価を監査する
  • 不当判定を修正する
  • 苦情を聞く
  • AIの評価基準を調整する
  • 法的責任を負う
  • 例外を認める
  • 長期的人材育成を守る

という仕事です。


27 しかし、ここで最初の問いが戻ってくる

では、そのAI管理監督者を誰がやるのかという問題です。

優秀なAI管理監督者には、

  • 現場経験
  • 人事経験
  • 判断経験
  • トラブル対応
  • 人を見る能力
  • AI理解
  • 法律理解

が必要でしょう。

つまり、かなり経験豊富な人間が必要です。

ところが、10年前に新人を採らなかった。

……(-_-;)


27 これが今回最大のパラドックス

まとめると、AIが新人仕事を代替→新人採用減少→中堅不足→管理職候補不足→AI管理職導入→AI管理職を監督できる経験者が必要→その経験者を育てる新人を10年前に採っていない

という循環です。

つまり、AIは人材不足を解決する一方、人材不足そのものを作る可能性があるという、何とも首を傾げたくなる結論が出てきてしまいます(-_-;)


29 では10年後、企業はどうするのか

私は大きく4パターンに分かれると思います。

①「他社から管理職を買う会社」

新人育成をやめ、必要になったら経験者採用。

短期合理性は高い。

しかし、多くの企業が同じことをすると管理職争奪戦になります。

給与が高騰するのは目に見えています……


②「AI管理職へ大幅移行する会社」

Luna型です。

管理・監視・シフト・評価・指示をAI化。

人間は例外処理だけ。

小売、物流、コールセンターなどではかなり進む可能性があります。


③「新人を採り続ける会社」

一見すると非効率です。

しかし、10年後の管理職を自社で確保するための投資と考える。

短期利益では不利。

長期では人材供給力が強みになります。


④「新人+AI」で育成方法そのものを変える会社

私はこれが最も有望だと思います。

新人を、AIに置き換えるのではなく、AIを使う新人として育てる。


29 新人の仕事内容を作り直す

例えば昔、

新人:報告書を10時間かけて作る。

未来:AIが10分で原案。新人がAIの原案を検証、数字を確認、間違いを見つける、なぜ間違ったのか考える、顧客へ説明する。

つまり、作業による修業から、判断による修業へ変える。

世界経済フォーラムも2026年6月、AI時代のエントリーレベル職を単に消すのではなく、初期キャリア経路そのものを再設計する必要性をテーマにした報告書を出しています。


30 そして10年後の「管理職」は今とかなり違うかもしれない

2036年の課長を想像すると、

現在の課長:人間20人を直接管理。

2036年:人間50人+AIエージェント100体のチームを統括。

あるいは、AI上司5体を監督し、AIで処理できない案件だけ判断。

という形かもしれません。

したがって必要能力も、自分で仕事を処理する能力から、人間とAIを組み合わせて仕事を設計する能力へ変わっていく可能性があります。


32 これは「誰も管理職になりたがらない問題」を解決する可能性もある

ここはAI上司を悲観的に見るだけでは不公平です。

以前の記事で、管理職になりたくない理由の一つとして、

  • 報告書
  • 会議
  • スケジュール調整
  • 評価文書
  • 数字集計

など大量の雑務も問題にしています。

ここをAIへ渡せれば人間管理職は、

  • 人を育てる
  • 意思決定する
  • 問題を解決する
  • チームを作る

という、本来のマネジメントへ集中できる可能性もあります。

つまり、AIが管理職を奪うではなくAIが管理職を再び「人を管理する専門職」に戻す可能性もあります。

これはかなり希望のあるシナリオです。


32 会社がAIを「支援」に使うか「削減」に使うかで未来が分岐する

パターンA

AI導入→管理職の雑務減少→部下との時間増加→育成改善→管理職魅力向上

これは好循環。

一方、

パターンB

AI導入→管理職を半分解雇→一人当たり部下倍増→AI監視強化→人間管理職は問題処理だけ→管理職さらに不人気

これは悪循環。

技術は同じです。違うのは、生産性向上分を何に使ったか。

これは記事解剖室で何度も出てきたテーマでもあります。


34.今回のSan Francisco Chronicleの記事が本当に示していること

表面的には、AIが人間をクビにした。という非常にキャッチーな記事です。

しかし、一段深く読むと「AIはどこまで上司になれるのか」という社会実験が現実世界で始まった記事だと思います。

そしてSB 947が問題にしているのは、AIを使うな、ではありません。

人間の人生に重大な影響を及ぼす判断から、人間を完全に外すな。

という線引きです。ここは非常に重要な違いです。



記事解剖室としての結論

このテーマを一本の記事にするなら、中心命題は私はこう置きます。

AIで新人を採らない企業が失うのは、今日の若手社員ではない。10年後の中堅、15年後の管理職、そしてAIを監督する未来の責任者である。

AIで新人業務を代替すること自体は合理的です。

管理職業務をAIへ移すことも合理的です。

Andon MarketのLunaを見る限り、その未来はすでに実験段階まで来ています。

しかし、「今この仕事をAIができる」ことと、「だから、この仕事を通じて人間を育てる必要もなくなった」ことは同じではありません。

ここを取り違える会社が増えると、2026年には「新人はいらない」と言い、2031年には「経験者が採れない」と言い、2036年には「管理職がいない」と言い、最後には「仕方がないからAIを上司にしよう」となるかもしれません。

しかしAI上司を導入した瞬間、「このAIが人を解雇するとき、誰が責任を取るのか?」という次の問題が発生します。

そしてカリフォルニア州のSB 947は、早くもその答えの一つとして、

最終的に人間を責任の輪から外してはいけない

という方向を提示しています。

そう考えると、10年後に完全な「AI課長」が大量発生するというより、

AIが日常管理を行い、少数の人間管理職がAIと人間の両方を監督し、重大判断について責任を負う

組織の方が現実的でしょう。

そして皮肉なのは、その未来で最も希少になる可能性があるのが、AIでは代替しにくい判断力と経験を持った人間の管理職だということです。

だから今回の問いへの最終回答は、「AIを用いることで新人を採らない会社は、10年後に誰を管理職にするのか?」

→ 他社が育てた管理職を奪うか、少数の既存管理職を巨大化させるか、AIを管理職にするしかなくなる。しかし、どの方法を選んでも最後には『経験ある人間』が必要になる。だから新人育成を完全に切ることは、AI時代においても長期的には自己矛盾を抱える。

になると思います。

あー、AIにも書かせているのに、なんかエライ疲れたこの記事の考察(-_-;)

追記

新人採用を減らすことは、単なる採用コストの削減ではありません。

将来の中堅社員や管理職候補の供給にも影響します。

AIが雇用・管理職・人材育成へどう連鎖するのかは、「AI時代の働き方はどう変わる?」でまとめています。

AI時代の働き方はどう変わる?雇用・評価・管理職・人材育成から考える
AI時代の働き方はどう変わるのか、雇用・評価・管理職・人材育成の面から考察しています。

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