AIの発達によって、
大学へ行ってホワイトカラーになるより、電気工事士や設備保全、配管工、溶接工などの技能職を選んだ方が安全なのではないか。
という考え方が以前より現実味を帯びてきました。
大分前のニュースですが、こんな現象がアメリカで起こっている、という記事も出ていましたしね。

これまで日本では、
高校を卒業したら大学へ進学し、できれば大企業のホワイトカラーになる。
というキャリアが、一つの「安全な道」として考えられてきました。
大学へ行く→会社へ入る→事務、営業、企画、管理などの仕事をする→経験を積んで管理職になる→給与を上げながら定年まで働く。
もちろん全員がこの道を歩んできたわけではありません。
しかし少なくとも、大学へ進学すれば、将来の選択肢が広がるという考え方には、かなり強い合理性がありました。
実際、現在でも大卒者の平均賃金は高卒者より高く、2024年の賃金構造基本統計調査を紹介した労働政策研究・研修機構の集計でも、男性の55~59歳では高校卒36万9400円に対し、大学卒は54万9600円となっています。つまり、「大学へ行く経済的価値がなくなった」という話ではありません。
一方で、AIの登場によって少し奇妙なことが起こり始めました。
これまで、高学歴で、高度で、頭を使う仕事ほど機械化されにくいと考えられていたのに、生成AIが得意なのは、
- 文章作成
- 要約
- 翻訳
- 情報収集
- データ整理
- 初歩的なプログラミング
- 資料作成
など、まさにホワイトカラーが担当してきた仕事です。
OECDも、手作業や身体能力を必要とする職種より、ホワイトカラー職の方がAIへの曝露度が高いと分析しています。
反対に、
電気工事、配管、設備保全、溶接、建設、自動車整備、空調設備、機械保全。
といった、
現場へ行き、現物を確認し、身体を動かしながら状況に応じて作業する仕事
は、生成AIだけでは簡単に置き換えられません。
では今後、大学へ行ってホワイトカラーを目指すより、高校卒業後から技能職へ入り、手に職をつけた方が合理的なのではないか、という考え方は正しいのでしょうか。
私は、一定の条件下では、以前よりかなり合理的になったと思います。
ただし「大学はもう意味がない。ブルーカラーへ行けば安泰だ」という話ではありません。
むしろAI時代に価値が下がっているのは、
大学卒という肩書だけを持ち、特別な技能を持たないホワイトカラー
なのではないでしょうか。
逆に価値が上がりやすいのは、
簡単に増やせず、AIだけでは代替できず、社会から継続的に必要とされる技能を持つ人
です。
それが大学で身につく場合もあれば、技能職で身につく場合もあります。
今回はこちらを考えてみたいと思います。
- なぜ今まで大学進学が合理的だったのか
- しかし大学には「4年間」という大きなコストがある
- AIが狙っているのは「高学歴」ではなく「デジタル化しやすい仕事」
- 技能職がAIに強い最大の理由は「現実世界」が面倒だから
- ただし「ブルーカラーだからAIに強い」わけではない
- AI時代に強そうな技能職には共通点がある
- 日本では技能職の希少性そのものが上がる可能性が高い
- 大卒ホワイトカラーでも「不足する側」は存在する
- 実は技能職にも「学歴に代わる参入障壁」がある
- 大学進学の「ブランド価値」より技能そのものを見る時代になる可能性
- しかし技能職には大きな弱点がある
- AIと技能職は敵ではなく、むしろ組み合わせた方が強い
- これはホワイトカラーでも同じ
- 大卒平均賃金が高いという事実は忘れてはいけない
- 同じように「高卒技能職」も一括りにできない
- 一番危険なのは「大学に行ったが技能もない」状態かもしれない
- 逆に「大学+技能」という第三の選択肢もある
- 「AIに奪われない仕事」を探すだけでは足りない
- 特に「独立できる技能」は強い
- ただし景気変動には弱い技能職もある
- AI時代にはブルーカラー自身も「ホワイトカラー化」する可能性がある
- AI時代の職業選択では「代替されにくさ」より「ボトルネックになれるか」が重要
- 結論:AI時代には「大学か技能職か」ではなく、「希少技能を作れる方」を選ぶべき
なぜ今まで大学進学が合理的だったのか
まず、AI時代だから大学へ行く意味がなくなった。と極端に考えないためにも、大学進学の強さを確認しておきたいと思います。
2025年の新規学卒者の賃金を見ると、男性では高校卒21万100円に対し大学卒26万4900円、女性でも高校卒20万2900円に対し大学卒25万9700円です。現在でも大学卒の初任賃金には明確な優位があります。
さらに大学卒でなければ入りにくい、
- 研究
- 金融
- コンサルティング
- 大企業総合職
- 法務
- 医療の一部
- 高度IT
- 技術開発
などがあります。
したがって大学は、四年間勉強する場所であると同時に、将来応募できる仕事の範囲を広げる資格でもあります。
この価値はAIが登場したからといって、突然消えるわけではありません。
しかし大学には「4年間」という大きなコストがある
一方、大学進学には費用があります。
文部科学省によると、2025年度の私立大学の初年度納付金等の平均は約150万8000円です。
んー、高い……私が学生だった頃より高くなっている(-_-;)
さらに重要なのは授業料だけではありません。
18歳で就職した人は、
18歳→19歳→20歳→21歳
と、4年間、
- 給与を受け取る
- 技能を身につける
- 昇給する
- 資格を取得する
- 現場経験を積む
ことができます。
大学生が22歳で新卒として就職するとき、高卒で技能職に入った人は、すでに4年目の職人・技術者。
つまり大学進学の本当のコストは、授業料だけではなく、4年間の所得と実務経験を得られなかった機会費用まで含めて考える必要があります。
もちろん、大卒後の賃金上昇でその差を取り返せれば問題ないです……これまでは、その可能性が高かったんですよね。
問題は、AI時代にも、すべての大卒ホワイトカラーについて同じことが言えるのか、です。
AIが狙っているのは「高学歴」ではなく「デジタル化しやすい仕事」
ここを間違えると、この問題を理解しにくくなります。
AIが得意なのは、情報をデジタルデータとして入力し、情報を加工して、デジタルデータとして出力できる仕事です。
たとえば、
文章→AI→文章
データ→AI→分析
コード→AI→コード
画像→AI→画像
という仕事です。
だから、高学歴・高賃金・ホワイトカラーであってもAI曝露が高くなります。
OECDも、AIへの曝露が高い職種は必ずしも低技能職ではなく、むしろホワイトカラーや高度技能職側に多いとしています。
以前の記事解剖室でも、
AIは人間の仕事全体を奪うというより、仕事を構成する「作業」の一部を奪う。
と考察しました。

特に、
- 定型処理
- 初歩的分析
- 情報整理
がAIへ移り、人間には判断、例外処理、対人調整、責任が残る可能性を指摘しています。
ここから考えると、「大学を出ればAIから安全」という保証はありません。
むしろ、大学卒業後にどんな仕事をするかの方が重要になります。
技能職がAIに強い最大の理由は「現実世界」が面倒だから
では、なぜ技能職はAIへの耐性が高いのでしょうか。
理由は、AIが頭脳だから、というだけではありません。
AIがどれほど賢くても、現実世界へ働きかけるには身体が必要だからです。
たとえば電気工事を考えてみます。
設計図をAIが作ることはできますし、必要な部品をAIが計算することもできるでしょう。
しかし実際の現場では、図面と配線が違う、壁を開けたら図面に掲載されてない想定外の配管がある、古い設備なので資料が残っていない、ネジが錆びて外れない、作業スペースが狭くてうまく活動できない、こういったことが起こります。
AIだけでは解決できません。
配管工事でも同じです。
水漏れ箇所を判断する、床下へ入る、古い配管を外す、新しい部材を加工する、現場に合わせて取り付ける。
これは、「正解を文章で答える」仕事ではありません。
物理世界を正解の状態へ変える
仕事です。
生成AIの進歩速度と、ロボットが現実世界のあらゆる環境へ対応できるようになる速度は同じではありません。
その差が、技能職の防御壁になります。
ただし「ブルーカラーだからAIに強い」わけではない
ここはかなり重要です。
ブルーカラーを一括りにしてはいけません。
たとえば、
- 単純な検品
- 定型的な組立
- 倉庫内搬送
- 同じ動作の繰り返し
などは、AIというよりロボット・画像認識・自動化設備によって代替される可能性があります。
つまり強いのは、ブルーカラーそのものではありません。
強いのは、現場ごとに状況が違い、資格・経験・判断・身体操作を組み合わせなければならない技能職。ここは区別した方がよいでしょう。
AI時代に強そうな技能職には共通点がある
私は、AI時代に比較的強い技能職には五つ程度の特徴があると思います。
1.現地へ行かなければ仕事ができない
電気工事、配管、設備保全、建築、自動車整備。
AIが海外のデータセンターから回答を出して貰っても、現場の壊れた設備は直せません。
2.毎回状況が少し違う
完全に標準化しにくい。
3.事故が起きれば重大なので資格・責任が必要
「AIがそう言ったので」では済まない領域。
4.経験による暗黙知が大きい
音。匂い。振動。微妙な手触り。
現場でしか分からない情報があります。
5.需要そのものがなくなりにくい
建物。電気。水道。道路。工場。自動車。
こうした物理インフラはAI時代になっても必要です。
つまり強いのは、資格+経験+現場判断+身体作業の組み合わせでしょう。
日本では技能職の希少性そのものが上がる可能性が高い
さらに日本には人口構造という要因があります。
国土交通省の推計では、建設技能労働者数は2020年以降、およそ5年ごとに7~8%ずつ減少する見込みで、2025年時点でも約半数が50歳以上になるとされています。
また国土交通省は、建設業で高齢化、若年層不足、新規入職者減少が進み、将来的にも技術者不足が続く見通しを示しています。
これは重要です。
AIから仕事を守ってくれるだけではありません。
競争相手そのものが減る可能性があります。
需要が維持され、供給者が減る。
普通に考えれば、技能の希少価値は上がります。
だから今後、電気工事士を持つ30歳、設備保全を10年経験した35歳、高度な溶接ができる40歳などの価値が、相対的に上昇する可能性があります。
ここで「人手不足なのにAIで人員削減するのか?」の記事につながる
以前の記事では、
日本全体が人手不足だからといって、すべての職種が不足しているわけではない。
と考察しました。

AIによって事務職が余る。
一方、
- 建設
- 運輸
- 設備
- 高度IT
では人が足りない。
だから、人員削減と人手不足は同時に成立すると整理しました。
今回の問題に置き換えると、若者が考えるべきなのは将来、日本全体で人手不足になるか? ではありません。
自分が選ぼうとしている職種は、2035年に「余る側」と「足りない側」のどちらにいる可能性が高いか?
でしょう。
ここはかなり重要です。
大卒ホワイトカラーでも「不足する側」は存在する
ここでブルーカラー礼賛へ行くと、分析として片手落ち。
経済産業省の2040年就業構造推計では、ホワイトカラーの一部に余剰が見込まれる一方、AI・ロボットなどを活用できる人材を含む専門職は多くの地域で不足するとされています。
つまり、ホワイトカラーは余る、というのは正確ではありません。
より正確には、一般的なホワイトカラー業務は供給過剰になり得る一方、高度専門職はむしろ足りないという二極化です。
たとえば、
AIに弱くなりやすい可能性
一般事務
定型資料作成
初歩的分析
定型文章作成
AIによって価値が増える可能性
AIシステム設計
高度エンジニアリング
専門的な法務判断
高度医療
研究開発
AI監査
高度な経営判断
という具合です。
以前の記事で扱った、AIは「仕事を消す」というより「仕事の階層を変える」という話と同じです。
したがって、大卒VS技能職ではなく、一般技能VS希少技能で考えた方が本質に近いでしょう。
実は技能職にも「学歴に代わる参入障壁」がある
高学歴ホワイトカラーの価値の一つは、簡単には参入できないことでした。
医師、研究者、高度技術者。
大学卒という資格自体が参入障壁になります。
技能職にも同じものがあります。
ただしそれが、大学卒ではなく、
- 国家資格
- 職業資格
- 実務経験
- 技能講習
- 熟練
になります。
例えば、電気の知識をYouTubeで勉強しました、というだけでは、何でも自由に電気工事できるわけではありません。
そのため、資格+実務経験を必要とする技能は、単純労働よりはるかに防御力があります。
AI時代に重要なのは、こうした、誰でも明日から参入できない仕事を選ぶことなのかもしれません。
大学進学の「ブランド価値」より技能そのものを見る時代になる可能性
OECDは2026年の「Skills-first labour market」で、労働市場における人材不足と技能ミスマッチへの対応として、学歴などの資格だけではなく、実際に何ができるかという技能をより重視する方向性を示しています。
これはAI時代と非常に相性がいいと思います。
なぜならAIによって、文章を書く、資料を作る、Excelを使う、簡単なコードを書く、という「そこそこできる能力」の価値が下がりやすいからです。
以前なら、大学を出てWordとExcelを使えて、一般的なビジネス文書を書けます、でも一定の価値がありました。
しかしAIがそれを代行するなら、では、あなた自身にしかできないことは何ですか?という問いが強くなります。
技能職はこの問いに答えやすい。
この設備を修理できます、この配線工事ができます、この機械を調整できます。
成果が具体的だからです。
しかし技能職には大きな弱点がある
ここまで読むと、では技能職へ行った方がいい、となりそうですが、そんなに単純ではありません。
技能職には明確なデメリットがあります。
最大の一つが、身体です。
20歳の身体と、50歳の身体は違います。
年をとってくると本当に実感出来るんですが、膝、腰、肩、目、その他諸々の体力。
これに近年は毎年夏に実感する酷暑に対する暑さ対策に高所作業、夜間作業。
身体能力は基本的に年齢と共に低下していきます。
一方、知識労働では経験が長いことがプラスになる場合があります。
したがって技能職を選ぶなら、20代から60代まで同じ肉体作業を続ける設計では危険です。
理想的なのは、20代→ 現場技能、30代→ 高度資格+熟練、40代→ 現場+診断・教育・管理、50代→ 監督・設計・教育・独立、というように、身体労働から技能・判断・管理へ比重を移していける職種です。
このキャリア設計まで考えないと、技能職の本当の合理性は評価できません。
「誰も管理職になりたがらない会社」の記事ともつながる
直前の記事では、
管理職になりたい社員が減れば、管理職そのものが消えるのではなく、少数の管理職に管理業務が集中する可能性
を考えました。
現在のサイトでも、AIによって管理職の事務作業が減る一方、人間関係や意思決定といった難しい仕事が残ると整理しています。

技能職でも似たことが起こります。
熟練技能者が減る→若手が少ない→一人の熟練者が多くの現場を見る→AIやセンサーで補助する→しかし最終判断できる熟練者はさらに忙しくなる……
という未来です。
つまり、技能職だからAIと無関係ではありません。
むしろ、AIを使える技能者の価値が上がる可能性があります。
AIと技能職は敵ではなく、むしろ組み合わせた方が強い
ここはかなり重要だと思います。
「AIか技能職か」ではありません。
今後強いのは、技能職+AIかもしれません。
例えば設備保全ならAIが、
- 過去の故障履歴を分析
- センサーデータを分析
- 故障候補を提示
- マニュアルを検索
行い、人間が、
現場を確認し、原因を判断し、修理する。
建設でも、
AI:設計補助、数量計算、工程予測。
人間:現場施工、判断、調整。
となる可能性があります。
AIによって技能職が不要になるのではなく、AIによって一人の熟練技能者がさらに多くの仕事を処理できる可能性があります。
すると、AIを使えない技能者と、AIを使って現場技能を拡張できる技能者の格差が広がるでしょう。
これはホワイトカラーでも同じ
同様に、AIに強いホワイトカラーは、AIと競争する人ではありません。
AIを利用して、
- 判断
- 交渉
- 設計
- 専門知識
- 人間関係
を増幅できる人です。
つまりAI時代には、
弱くなりやすい
一般事務+AIなし
強くなりやすい
高度専門職+AI
そして、
強くなりやすい
高度技能職+AI
という構造になる可能性があります。
この意味では、ホワイトカラー対ブルーカラーという分類自体が少し古くなるのかもしれません。
大卒平均賃金が高いという事実は忘れてはいけない
ここで再び大学側へ戻ります。
大学卒の平均賃金は、今も高卒より明確に高い、大学卒の初任給も高い。
したがって、AIがあるので18歳なら全員大学へ行かず技能職へ、という助言は、現時点では合理的ではありません。
問題は「大学へ行くか」ではなく、大学で何を獲得するのかです。
4年間と数百万円を使って、大卒という肩書だけを取得するのと、工学、情報、医療、法律、会計、研究など、市場で不足する専門技能を取得するのでは、意味が全く違います。
同じように「高卒技能職」も一括りにできない
技能職でも、誰でも短期間で覚えられる仕事と、5年、10年かけなければ身につかない仕事があります。
AI時代に強いのは後者でしょう。
例えば、高卒だから有利ではありません。
22歳になった時点で、大卒者にはない4年間の希少技能を持っているかが重要です。
18歳から4年間働いたにもかかわらず、誰でもできる単純作業しか経験していない……これなら大学へ行った人より有利とは限りません。
逆に22歳で、
- 国家資格
- 4年間の現場経験
- 設備知識
- 安全管理能力
を持っていれば、かなり違います。
一番危険なのは「大学に行ったが技能もない」状態かもしれない
少し厳しい言い方になりますが、AI時代にはここが一番問題になる可能性があります。
大学へ4年間通った。
しかし、何ができますか?と聞かれると、特にありません、となる。
その後、
- 定型資料
- 入力
- 一般事務
- 簡単な文章作成
など、AIと競合しやすい初級ホワイトカラーへ入る。
これでは、大学費用+4年間という投資に対して、回収が難しくなる可能性があります。
AI時代には、大卒か高卒か以上に、22歳の時点で何ができるかが重要になるのではないでしょうか。
逆に「大学+技能」という第三の選択肢もある
実は一番強いのは、大学か技能職かの二択ではないと思います。
たとえば工学系大学へ進み、
- 電気
- 機械
- 建築
- 情報
を学ぶ。
そして現場経験も積む。
このタイプはかなり強いでしょう。
設計も分かる、現場も分かる、AIも使える、管理もできる。
つまり、頭脳+現場+AIです。
AIが発達するほど、この「境界領域」の人材は価値を持つ可能性があります。
大学と技能職を「投資」として比較してみる
これまでの記事解剖室では、人がどこへ能力を投入するかを「人的資本の投資」として考えてきました。
「なぜ本業では最低限しか働かない人が、副業では努力できるのか?」でも、人が労働意欲を失ったのではなく、よりリターンを期待できる場所へ能力を移している可能性を考察しました。

大学進学も同じです。
18歳で、自分の4年間をどこへ投資するかという選択です。
大学
4年間+学費→専門知識・学歴・人脈→22歳から労働市場
技能職
18歳から労働→給与+資格+経験→22歳で4年経験
どちらが勝つかは、その後どれだけ市場価値が上がるかによります。
だから正しい問いは、大学と技能職、どちらが上か、と言うのは不適当でしょう。
18歳から22歳までの4年間をどこへ投資すれば、自分の希少性が最も高くなるか?
です。
「AIに奪われない仕事」を探すだけでは足りない
ここにも注意が必要です。
AIに奪われないから配管工、というだけでは不十分です。
AIに奪われなくても、
- 給与が低い
- 身体を壊す
- 仕事が減る
- 地域を選べない
なら、良いキャリアとは言えません。
見るべきなのは、AI耐性だけではなく、人手不足度、資格参入障壁、給与上昇余地、身体負荷、独立可能性、50代以降のキャリア、AIとの補完性、この辺りを見る必要があるでしょう。
特に「独立できる技能」は強い
技能職のもう一つの特徴が、独立です。
電気、配管、設備、建設、自動車。
これらは、経験と資格を積めば独立できる場合があります。
これは以前の記事解剖室で扱った、副業では努力の成果が自分へ戻りやすいという問題ともつながります。
会社員技能者→熟練→資格→独立、となれば努力の利益を自分が回収する割合を増やせます。
会社員ホワイトカラーより起業への道筋が見えやすい技能もあります。
これも技能職の一つの強さでしょう。
ただし景気変動には弱い技能職もある
技能職なら安全、というわけではありません。
建設需要は景気や公共投資によって変化します。
自動車整備もEV化で必要技能が変わります。
工場設備も自動化されます。
つまり、今不足している職業を選ぶだけでは危険です。
重要なのは、技術変化に応じて技能を更新できる職種を選ぶこと。
自動車整備なら、エンジンだけではなく、EV・電子制御・ソフトウェア診断。
電気工事なら、従来配線だけではなく、再エネ・蓄電池・データセンター・制御。
建設なら、従来施工だけではなく、BIM・ICT施工・ドローン、という具合です。
AI時代にはブルーカラー自身も「ホワイトカラー化」する可能性がある
これは少し面白い変化です。
熟練技能者がAIを使うと、
午前:AIで故障データ解析。
昼:現場修理。
午後:タブレットで報告。
夕方:AIで保全計画作成。
という働き方になるかもしれません。
つまり、頭を使うホワイトカラーと身体を使うブルーカラーの境界が曖昧になります。
将来価値が高いのは、現場だけの人でも、パソコンだけの人でもなく、現場を理解しながらデジタル技術を使える人かもしれません。
AI時代の職業選択では「代替されにくさ」より「ボトルネックになれるか」が重要
私は最終的にここが重要だと思います。
AIに絶対奪われない職業を探すのは難しい。
それより、社会が動くために絶対に必要なのに、供給できる人が少ない能力を持つ方が強い。
つまり、ボトルネックになるという考えです。
工場にAIが100台あっても、設備故障を直せる人が一人しかいなければ、その一人がボトルネックです。
データセンターが増えても、電気設備を設計・施工・保守できる人が足りなければ、そこがボトルネックになります。
病院にAI診断があっても、最終判断する専門職が必要なら、そこがボトルネックです。
AI時代には、人間にしかできないこと以上に、人間がいないと最後の工程が完成しないことを持つ人が強いのかもしれません。
結論:AI時代には「大学か技能職か」ではなく、「希少技能を作れる方」を選ぶべき
では、AI時代にホワイトカラーの大卒よりブルーカラーの技能職を選ぶのは合理的なのか?
私の答えは、以前よりはるかに合理的な選択肢になっている。ただし、技能職なら何でもよいわけではないです。
大学には今でも明確な価値があります。
大卒の平均賃金は高く、大学卒でなければ入りにくい高度専門職も存在します。
したがって、AI時代だから大学は不要という結論にはなりません。
一方、大学さえ出れば安全という考え方も、以前より危険になっています。
AIへの曝露はホワイトカラー側でも高く、特に定型的な知識労働はAIによる効率化・代替の影響を受けやすいからです。
対して日本の建設技能者などは、高齢化と若年層不足によって今後も供給減少が見込まれています。
すると18歳の若者にとって、高卒で技能職へ進み、22歳までに4年間の経験と資格を得るという道は、以前より十分検討に値します。
ただし条件があります。
目指すなら、単純肉体労働ではなく、資格+現場経験+判断力+AI・デジタル技術を組み合わせられる技能職でしょう。
反対に大学へ進むなら、大卒という肩書だけではなく、大学でしか得にくい専門能力を取ることが重要になります。
そう考えると、
弱くなりやすいルート
大学→特別な専門技能なし→定型ホワイトカラー
強くなりやすいルートA
大学→高度専門技能→AIで能力を拡張
強くなりやすいルートB
高校・専門教育→資格+現場技能→AI・デジタル技術で能力を拡張
この三つに分かれていくのではないでしょうか。
そして、これまで記事解剖室で考えてきた、
「人手不足なのにAIで人員削減する」
という問題ともつながります。
AIは、人間を全部不要にするのではありません。
余る人材と足りない人材を入れ替える
可能性があります。
だからこれから重要なのは、ホワイトカラーになることでも、ブルーカラーになることでもありません。
AI時代に「足りない側」にいられる技能を持つことなのだと思います。
そして、その技能は必ずしも大学の中にあるとは限りません。
工場、建設現場、整備工場、電気設備、データセンター、インフラ保守。
そうした場所にも存在します。
逆に大学の中にも、AI、工学、医療、研究、法律など、極めて希少性の高い専門技能があります。
つまり18歳の若者が考えるべき問いは、「大学へ行った方が偉いのか?」
でも、「技能職ならAIに勝てるのか?」でもありません。
もっと現実的に、「22歳になったとき、自分は何ができる人間になっているのか?」です。
大学で4年間学んだ22歳。
現場で4年間技能を磨いた22歳。
どちらが有利かは、学歴だけでは決まりません。
その4年間によって、他の人が簡単には代わりになれない能力を、どれだけ作ることができたか。
そこがAI時代には、以前以上に重要になるのではないでしょうか。
追記
AIによって職業ごとの将来性が変われば、個人のキャリア選択も変わります。
ただし、仕事選びだけでなく会社内部の雇用・評価・管理職・育成まで含めて見る必要があります。
その全体像は、「AI時代の働き方はどう変わる?」で整理しています。



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