「管理職にはなりたくない」
こう考える会社員が増えていると言われており、この理由については、これまで記事解剖室でも何度も考えてきました。
責任が増える、部下の面倒を見なければならない、トラブル対応も増える、場合によっては残業も増える。
それに対して、
- 給与
- 裁量
- 自由時間
- キャリア上のメリット
が十分に増えないのであれば、管理職にならない方が合理的、という判断が生まれます。
実際、パーソル総合研究所の調査を基にした集計では、「現在の会社で管理職になりたい」と回答した人は2021年の24.0%から2024年には17.2%へ低下しています。20代でも36.4%から28.2%へ低下しました。
しかし今回は、なぜ管理職になりたくないのか、をもう一度考えるのではありません。
その先にある、もし「管理職になりたくない」という判断が個人にとって合理的になり、多くの社員が同じ判断をするようになったら、会社は最終的にどうなるのでしょうか。
管理職そのものがなくなる? いえ、おそらくそうはなりません。
会社には、
- 人員配置
- 評価
- 育成
- 意思決定
- 部署間調整
- トラブル対応
- 経営方針の伝達
を行う人間が必要になります。つまり、
管理職になりたい人が減ったからといって、管理しなければならない仕事まで消えるわけではない。
ここが問題で、最終的に起こる可能性が高いのは、管理職がいなくなる会社ではなく、残った少数の管理職へ管理業務が集中する会社ではないでしょうか。
そして、それがさらに管理職の魅力を低下させるという悪循環が始まってしまうのではないかなぁ、と考えています(-_-;)
- 管理職になりたくないこと自体は合理的
- しかし個人合理性と組織合理性は一致しない
- 最初に起きるのは「なりたくない人を昇進させる」ことかもしれない
- 次に起きるのが「管理職の巨大化」
- すると管理職の仕事はさらに魅力がなくなる
- 「管理職不足」が次の人手不足になる可能性
- ただし「管理職になりたくない人ばかり」というイメージにも注意が必要
- 「責任はあるが権限がない」が最も危険なのではないか
- 「管理職をやりたい人」ではなく「出世したい人」を管理職にしてきた問題
- 専門職と管理職を「別の職業」と考えた方がよい
- これは「成果主義」の問題ともつながる
- AIで管理職は減らせるのか
- AIで管理職を減らしすぎると、残った管理職が「メガ管理職」になる
- 管理職不足で最初に犠牲になるのは「育成」かもしれない
- これは「AIリストラで新人を減らす問題」と同じ構造である
- 出社回帰とも意外なところでつながる
- 「誰も管理職になりたくない」は会社への強烈な市場シグナルでもある
- 誰も管理職になりたがらない会社の最終形
- では会社は何を変えればよいのか
管理職になりたくないこと自体は合理的
まず個人側から考えてみます。
一般社員Aさんがいます。現在、
- 年収500万円
- 残業少なめ
- 自分の仕事を中心に担当
- 休日は基本的に仕事を考えなくてよい
という状態だったとします。
管理職になることで、
- 年収550万円
- 部下10人
- 評価責任
- 人間関係の調整
- トラブル時の対応
- 上司への報告
- 業績責任
が加わったとしましょう。この条件なら、
年間50万円多くもらうために、この責任を引き受ける価値があるだろうか。
と考えるのは不自然ではありません。
実際、2026年にRobert Waltersが紹介した日本の調査では、中間管理職を避ける要因として最も多かったのは「高ストレスなのに見返りが小さい」で77%でした。意思決定権の乏しさも理由として挙げられています。
つまり野心がない、だけでは説明できません。
むしろ、提示されている昇進の交換条件を見て、割に合わないと判断している可能性が高いかと。
しかし個人合理性と組織合理性は一致しない
ここで問題が起きます。
社員Aさん:管理職にならない方が得。
社員Bさん:私もならない。
社員Cさん:私も専門職のままでいい。
一人一人の判断には合理性がありますが、100人が同じ判断をしたらどうでしょう。
誰かが、
- 仕事を割り振る
- 部下を育てる
- 評価する
- 部署間を調整する
- 経営陣の方針を現場へ伝える
- 現場の問題を経営へ伝える
必要があります。
管理職という肩書をなくしても、この仕事は消えません。
当然のことなんですが、誰もやりたくない仕事でも、組織には必要なのです。
これは以前の記事「仕事が早い人に追加の仕事を与えるのは本当に悪いのか?」とよく似ています。

個人として、追加業務を引き受けたくないことには合理性がある。
しかし会社全体には仕事が残っおり、誰かが担当しなければならない。
記事解剖室では、この問題を「追加業務そのものが悪いのではなく、追加業務しか返さない会社が問題」と整理しました。
管理職でも同じことが言えます。
管理業務そのものが不要なのではなく、管理業務を引き受けた人への見返りと支援が足りないことが問題なのです。
最初に起きるのは「なりたくない人を昇進させる」ことかもしれない
管理職候補が減っても、会社は管理職を空席にしておけません。
すると、「君しかいないから」という昇進が増える可能性があります。
これはかなり危険です。
本人:本当は管理職になりたくない。
会社:でも他に候補がいない。
本人:仕方なく引き受ける。
こうして、やりたい人を管理職にする制度から、断らなかった人を管理職にする制度へ変わっていく可能性があります。
能力があるから、人を育てたいから、組織を良くしたいから、ではなく、
順番が来たから。
他にいないから。
という昇進……年功序列とは異なりますが、これはこれで大分問題がありそう(-_-;)
これでは管理職の質まで不安定になります。
次に起きるのが「管理職の巨大化」
候補者が足りないなら、一人の管理職が見る人数を増やす方法があります。
実際、米国では組織階層を薄くする動きの中で、一人の管理職が担当する部下の人数が増えています。Gallupのデータとして報じられた数字では、管理職一人当たりの直属部下は2013年の平均8.2人から、2024年10.9人、2025年12.1人へ増えています。
一見すると効率的です。
以前:管理職10人 × 部下10人
だったものを、
管理職5人 × 部下20人にする。
管理職人数は半分、組織階層も減ります。
意思決定も速くなるかもしれません。
しかし管理職一人が使える時間は増えない……
部下10人なら一人につき週30分話せた人が、20人になれば同じことをするだけで倍の時間が必要になってくる、と計算をしていくと、結果として何が削られるでしょうか。
おそらく、
- 雑談
- 育成
- キャリア相談
- 長期的な改善
- 丁寧なフィードバック
この辺りでしょうか。
現に、4月から異動になった工場の上司、仕事が回らないのか面談の時にやるフィードバック、3分もやっていませんからね(-_-;) 以前の工場では30分くらいは話していたのに……
緊急ではない仕事から削られていき、残るのは、数字、トラブル、納期、緊急案件です。
管理職は人を育てる人から、問題が起きたときだけ呼ばれる処理係へ近づいていきます。
すると管理職の仕事はさらに魅力がなくなる
ここから悪循環が始まります( ノД`)
第1段階
管理職になりたい人が減る。
↓
第2段階
一人の管理職が見る人数が増える。
↓
第3段階
管理職の仕事量が増える。
↓
第4段階
育成や長期的仕事をする余裕がなくなる。
↓
第5段階
現場の社員から見ると、「管理職って、ずっとトラブル処理しているな」となる。
↓
第6段階
さらに管理職になりたい人が減る……という循環です。
日本の管理職・中間管理職を対象にした2025年調査でも、63.7%が仕事量を「重い」と感じ、60%が仕事量が増えたと回答しています。
つまり、管理職不足だから現在の管理職の負担が増える。
そして、現在の管理職の負担を見た若手が管理職を避ける。
という具合なバッドスパイラル(-_-;)
「管理職不足」が次の人手不足になる可能性
以前の記事「人手不足なのに、なぜAIで人員削減するのか?」では、
人手不足とは単純な人数不足ではなく、必要な能力を持った人材が必要な場所にいない問題でもある。
と考察しました。

管理職にもまったく同じことが言えます。
社員数1000人。人数だけなら十分います。
しかし、人を管理できる人が足りないとなればどうなってくるでしょう?
人がいるのに人手不足、なんて笑えない事態に陥ります。
以前の記事で、AIによって単純人材は余る一方、高度人材は不足する可能性を考えました。
同じように、
一般社員はいる→しかし管理職候補がいない→「管理できる人」が不足する
ということが起こります。
つまり、将来の企業で不足するのは、エンジニア、技能職、AI人材だけではありません。
管理職も希少人材になる可能性がありる、いや、もう始まっている可能性もありますね。
ただし「管理職になりたくない人ばかり」というイメージにも注意が必要
ここで少し修正も必要でしょう。
世の中の誰もが管理職を嫌っているわけではありません。
日本マンパワーが2025年に管理職500人を対象に行った調査では、44.4%が「管理職を続けたい」と回答し、72.2%は悩みを相談できる相手がいると答えています。
これは重要です。
つまり、管理職=全員が嫌々やっている罰ゲーム、という描き方も正確ではありません。
管理職には、
- 人を育てる
- 組織を動かす
- 大きな意思決定に関われる
- 自分の考えを仕事へ反映できる
という面白さもあります。
問題は、その面白さを感じられるように職務が設計されているかです。
「責任はあるが権限がない」が最も危険なのではないか
私は管理職問題の核心の一つはここだと思います。
管理職:部下の成果について責任を取ってください。
しかし、人員は増やせません、給与も決められません、評価制度も変えられません、仕事量も本社が決めます、採用も人事が決めます。
となってしまうと……責任は管理職にあるのに、問題を解決する権限は別の部署、という状態です。
2026年のHR総研の調査でも、管理職の負担増大・役割複雑化が問題視される一方、「権限委譲」が若手の昇進意欲とも関係する可能性が注目されています。
これはかなり重要です。
管理職の給与を少し上げるだけでは全然足りないように私には思えます。
責任と同じだけの裁量を渡す必要があります。
「管理職をやりたい人」ではなく「出世したい人」を管理職にしてきた問題
ここには日本企業を含めた従来型キャリアの構造的問題もあります。
多くの会社では、一般社員→主任→係長→課長→部長
というように、給料を上げる=管理職になる、という構造があります。
すると、専門能力は高い、しかし、人を管理することには興味がない。
人まで管理職になります。
プログラマーとして優秀、営業として優秀、研究者として優秀……だから管理職へ。
しかし、優秀なプレーヤー=優秀なマネージャーとは限りません。
私は野球が好きなんですが、名をはせた有名な名プレイヤーが、監督として名将であるかは別問題、というのと同じです、
逆に本人からすれば、なぜ専門職として成功したら、専門の仕事をやめて人事管理をしなければならないのか、となります。
管理職不足を解決するなら、管理職にならなければ給与が上がらないという一本の階段自体を見直す必要があるでしょう。
専門職と管理職を「別の職業」と考えた方がよい
一つの解決策はかなり単純です。
専門職ルート
一般社員→上級専門職→シニア専門職→最高専門職
管理職ルート
一般社員→小チーム管理→課長→部長
という二本立てにする。
管理職にならなくても、
- 給与
- 地位
- 裁量
を上げられるようにします。
そうすれば、給料を上げるため仕方なく管理職になる人は減らせるのでは?
一方、人を育てたい、組織を動かしたい。という人が管理職へ進む。
管理職を、出世した社員へのご褒美ではなく、マネジメントという専門職として扱う。
……と言うか、私としてはこれが在るのが普通の職業形態だと思うんですが、世間一般ではそうなっていない……色々と考え方が私は周りからズレていると感じることが多々ありますから(-_-;)
これは「成果主義」の問題ともつながる
以前の記事では、成果主義にすれば「働いているフリ」がなくなるのかを考えました。

そこで出てきた問題の一つが測りやすい成果と、本当に会社に必要な価値は一致しない、という問題。
管理職の成果はまさに測りにくい。たとえば、
管理職A
部下が問題を起こす→Aが必死に解決→目立つ。
管理職B
日頃から育成・確認する→大きな問題が起きない→何も起きないので目立たない。
どちらの成果が大きいでしょう。
一概には言えませんが、おそらくBでしょう。何せ、そもそも問題が発生しないように日々の業務をこなしているのですから。
しかし、数字としてはAの方が残る場合があります。
管理職の仕事には、「起こらなかったこと」を作るという価値があります。
離職しなかった、事故が起きなかった、トラブルにならなかった、新人が辞めなかった、部署間対立が悪化しなかった。
こうした仕事を評価できない会社では、優れた管理職ほど報われないこともある……と言うか、私は管理職ではありませんが、ウチの会社、ミスを防いだとかそういうのは『当たり前だよね』と上司が評価しないような形になっているのか、全く評点上がりませんからね(-_-;)
そういう会社、結構多いんじゃないでしょうか?
AIで管理職は減らせるのか
ここでAIが登場します。
AIによって、
- 報告書
- 会議要約
- スケジュール管理
- 資料作成
- データ整理
- 評価コメントの下書き
などは効率化できます。
すると経営側は、管理職も減らせるのではないか、と考えるでしょう。
実際、企業の階層を薄くし、一人の管理職が見る人数を増やす動きはすでに海外で報告されています。
しかし、ここで以前の記事、「AIは仕事を楽にするのか、それとも『楽な仕事』だけ奪うのか?」の問題が戻ってきます。

同記事では、AIが定型的・低負荷な仕事を引き受ければ、人間には難しい判断、例外処理、対人調整、最終責任が濃縮される可能性を考えました。
これを管理職へ当てはめると、
AI:会議要約をします、データを集計します、報告書を作ります。
人間の管理職:部下同士が揉めています、退職したい社員がいます、評価に納得しない社員がいます、人員が足りません、経営陣から数字を求められています。
となります。
つまりAIによって、管理職の仕事がなくなるというより、管理職の仕事から「事務作業」が消え、人間関係と意思決定だけが濃縮される可能性があります。
管理職という仕事は、むしろ精神的に難しくなるかもしれません。
AIで管理職を減らしすぎると、残った管理職が「メガ管理職」になる
ここでも人数削減の問題です。
AI導入前:管理職1人+部下10人
AI導入後:AI+管理職1人+部下20人
とします。
報告書やデータ処理はAIが助けるので、理論上可能かもしれません。
しかしAIは、部下20人全員との信頼関係を管理職の代わりに作れるでしょうか。
一人一人の、
- モチベーション
- 家庭事情
- キャリア
- 人間関係
- 心理状態
を理解して支援するのは、かなり難しい。
結果として、管理はできる。
しかし、マネジメントはできないという状態になる可能性があります。
人員配置表は作れる、KPIも見える……しかし、人が育たない。
この違いは重要です。
管理職不足で最初に犠牲になるのは「育成」かもしれない
トラブル対応は待ってくれません、今日の納期も待ってくれません、売上報告も必要。
では管理職が忙しくなったとき、何が後回しになるでしょうか。
私の経験上、それは、人材育成になると思います。
新人との面談、キャリア相談、仕事を教える時間、難しい仕事を少しずつ任せる時間。
これらは、今日やらなくても会社は止まらないからです。
しかし5年後に効いてきます。
管理職不足→既存管理職が忙しくなる→育成時間を削る→若手が育たない→次の管理職候補が減る→さらに管理職不足、となります。
これは典型的な悪循環です。
これは「AIリストラで新人を減らす問題」と同じ構造である
「人手不足なのに、なぜAIで人員削減するのか?」では、
AIで新人が担当していた単純業務を減らし、新人採用まで減らすと、10年後の熟練者を誰が育てるのか。
という問題を取り上げましたが、管理職も同じです。
今日、管理職候補がいないので、一人の管理職に20人見てもらおう。
……まぁ、短期的には解決するでしょう。
しかし、その20人の中から次の管理職を誰が育てるのか……この難題が残ります。
短期合理性が長期的な人材不足を作ります。
出社回帰とも意外なところでつながる
直前の記事「出社回帰は本当に生産性のためなのか?」では、リモートワークになるほど管理職には、
- 仕事の明確化
- 成果評価
- 情報共有設計
- 部下との意図的なコミュニケーション
が必要となり、出社させることで「管理可能性」が高まる側面を考察しました。

ここから考えると、管理職不足と出社回帰がつながる可能性もあります。
一人の管理職が大量の部下を見る。
しかも全員リモート……これは中々に難しい。
だから、【とりあえず出社させよう】という会社が出ても不思議ではありません。
つまり出社回帰の一部は、社員の生産性向上だけではなく、不足している管理能力を、物理的な可視性によって補っている可能性も出てきますね。
「誰も管理職になりたくない」は会社への強烈な市場シグナルでもある
ここまで考えると、少し違う見方ができます。
会社があるポジションを募集する→誰も応募しない。
こうなると、通常なら、給与が低すぎるのでは、条件が悪いのでは、と考えます。
管理職も同じではないでしょうか。
会社:管理職になりませんか?
社員:なりたくありません。
会社:最近の若者は出世欲がない。
ではなく、会社が提示している「管理職」という商品の条件が悪い、と考えるべきなのかもしれません。
これはキャリアミニマリズムの記事ともつながります。

同記事では、社員の野心が消えたのではなく、
会社という投資先の魅力が下がり、人的資本を会社外へ配分するようになった可能性
を考えました。
サイトでも、会社の外へ努力や創造性を移す動きを「野心の消滅」ではなく「野心の移動」として扱っています。
管理職離れも、野心の消滅ではなく、野心の投資先変更かもしれません。
会社の課長にはなりたくない……しかし副業では経営する、コミュニティではリーダーになる、自分の商品は作る。
これであれば、人を率いる意欲がないとは言えません。
この会社で管理職をする魅力がない、と考える方が妥当です。
誰も管理職になりたがらない会社の最終形
ではこの問題を放置すると、最終的にどうなるでしょうか。
私は次のような流れになる可能性があると思います。
1.管理職候補が減る
↓
2.断り切れない社員を昇進させる
↓
3.一人当たりの部下数を増やす
↓
4.管理職の業務が増える
↓
5.育成・面談・長期改善が削られる
↓
6.現場と経営の距離が広がる
↓
7.若手から見る管理職の魅力がさらに低下する
↓
8.優秀な社員ほど専門職・転職・副業へ逃げる
↓
9.残った管理職へさらに仕事が集中する
↓
10.会社はAIや制度による管理を強化する
という状態です。
管理職そのものはなくなりません、むしろ、人間の管理職は減るのに、管理しなければならない仕事は増える可能性があります。
その結果として、管理職一人当たりの責任が巨大になる……これが最もありそうな未来ではないでしょうか。
まぁ、私はこうなるという予想をもとに、将来的な副業の土台になれば、と思ってブログを書き始めたのですが。
収入が入ってくるのが勤務している会社だけ、という状態は生殺与奪権を握られているのに等しい状態なので(-_-;)
では会社は何を変えればよいのか
「管理職になりなさい」と社員を説得するだけでは難しいでしょう。
管理職という仕事そのものを再設計する必要があります。
例えば、
1.給与を上げる
最も分かりやすい方法です。
2.権限を渡す
責任だけでなく、人員・予算・働き方などを決める裁量も与える。
3.部下数に上限を設ける
一人で何十人も抱えない。
4.管理職から実務を減らす
プレイングマネージャーとして通常業務まで大量に抱えさせない。
5.管理職以外の昇給ルートを作る
専門職として給与を上げられるようにする。
6.AIは管理職削減ではなく、管理職支援へ使う
資料、集計、スケジュールなどをAIへ任せ、人間は育成と意思決定へ集中する。
7.管理職の成果として「育成」を評価する
短期数字だけではなく、部下の成長や離職、後継者育成を見る。
重要なのは、管理職になりたい人を増やすことではありません。
管理職になった人が「なってよかった」と思える仕事を作る。
ことです。
結論:管理職不足は「若者の野心不足」ではなく、組織設計への警告なのかもしれない
「誰も管理職になりたがらない会社は、最終的にどうなるのか?」
管理職がなくなるわけではありません、管理業務は残りますからね。
だから最終的には、少ない管理職へ仕事が集まる。
その管理職が疲弊し、育成が止まり、次の候補者が育たない結果、さらに管理職不足になる。
という悪循環に入りやすいでしょう。
ここで、最近の社員には責任感がないと考えても解決しません。
これまで記事解剖室では一貫して、人間は制度に適応するという問題を見てきました。
能力を発揮すると仕事だけ増えるなら、能力を隠す。
副業の方が努力のリターンを回収できるなら、能力を会社の外へ移す。
AIで効率化した結果として人員削減されるなら、AI活用を隠したくなる。
出社している姿が評価されるなら、出社している姿を見せる。
同じように、管理職になると責任と仕事だけ増え、十分な給与・裁量・時間が返ってこないのであれば、
管理職にならない。
という選択が増えるのは当然です。
問題は社員側の精神ではなく、そう判断することが合理的になってしまった制度にあります。
そして、これは企業にとってかなり重要なシグナルでしょう。
市場で商品が売れないとき、顧客の価値観がおかしくなった。
とは普通考えません。
価格なのか。品質なのか。競合商品なのか……商品そのものを調べます。
ならば、管理職というポジションが社員から選ばれなくなったときも同じです。
「若者は野心がない」と嘆く前に、管理職という仕事は、今でも社員が自ら選びたくなる商品になっているのか?
を企業側が問うべきではないでしょうか。
そしてAI時代には、この問題はさらに重要になります。
AIで管理業務の一部は減らせます。
しかし、人を育てる、難しい判断をする、対立を調整する、責任を引き受ける。
という仕事は残ります。
だからAI時代に希少になるのは、管理職という肩書を持つ人ではなく、「人を動かし、育て、責任を引き受けられる人」なのかもしれません。
だとすれば、これから企業が考えるべきなのは、
「誰を管理職に昇進させるか」
だけではありません。
「その希少な能力を持つ人が、それでも管理職をやりたいと思える会社になっているか」
なのだと思います。
追記
管理職不足は、待遇や責任の問題だけではありません。AIの導入、新人採用の減少、人材育成の変化ともつながっています。
AI時代の管理職を含めた働き方の全体像は、「AI時代の働き方はどう変わる?」で整理しています。



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