効果が疑われ社員も上司も嫌う評価制度が会社に残る理由

記事解剖

私はこのブログの記事を書く際にAIを用いているんですが、題材探しにも使っています。

結果、このような記事をチャットGPTがピックアップしてきました。

Employees hate annual performance reviews, and so do their bosses. Companies can’t seem to quit them.
You hate annual reviews. Your boss hates annual reviews. HR experts hate annual reviews. It's time to finally kill off a…

Business Insiderの記事「Kill the performance review」は2026年8月24日公開。

チャットGPTに訳して貰った、筆者Emily Stewart氏の主張を一言でまとめるなら、

年1回の人事評価は、社員を成長させる仕組みとしてほとんど機能していない。それなのに企業は惰性で続けている。

というもの。

いや、なんかこれを見た瞬間に元々の予定に割り込ませてこの題材を書こう、と思い立ちまして(´∀`)

記事ではGallup調査を引用し、勤務先のパフォーマンス管理が自分の仕事への意欲を高めていると答えた社員は約2割にとどまり、Fortune 500企業のCHROでも、自社の評価制度が改善を促していると考える人はわずか2%だったと紹介しています。

記事が挙げる問題は大きく、

  • 半年前、1年前の出来事を思い出して評価する
  • 評価、育成、昇給、昇進を一度に処理する
  • 社員には強いストレスを与える
  • 管理職には大量の書類仕事を与える
  • 評価結果を渡しても、具体的な改善支援にならない

というもの。

象徴的なのが、記事中のAshley Goodall氏の趣旨です。

人は点数を付けられて上達するのではなく、助けてもらって上達する。

Business Insiderは、年次評価の代わりに週次・隔週などの頻繁なチェックインを行い、社員が何を必要としているかを上司が把握する仕組みを紹介しています。

HubSpotは四半期チェックインへ移り、e.l.f. Beautyは伝統的な人事評価をやめ、日常的なフィードバックと、昇進・報酬の判断を分離しています。

ここまではかなり納得できます。

しかし私は「だから年次評価を廃止すれば解決する」とまでは思いません。

  1. 年次評価の最大の問題は「年1回」であることではない
  2. 特に「査定」と「育成」を同時にやることには構造的な矛盾がある
  3. これは「能力を隠す社員」とまったく同じ構造
  4. 「働いているフリ」も年次評価によって強化される可能性がある
  5. 年次評価には「一年分の自分を演出するゲーム」という側面がある
  6. ここで「成果主義なら解決するのか?」の記事が戻ってくる
  7. 「年1回」を「毎週」にしたら本当に幸せなのか?
  8. 「頻繁なフィードバック」と「頻繁な査定」は全く違う
    1. 良い頻繁なフィードバック
    2. 頻繁な査定
  9. ここでAIが登場する
  10. 「AIが評価する」のではなく「AIが記憶する」
  11. AIによって「意味のない評価制度」が猛烈に効率化される可能性がある
  12. 管理職不足の記事とも強くつながる
  13. 年次評価が機能しない最大の理由は「管理職に一年間育成させていない」ことでは?
  14. これは「評価」と「マネジメント」を混同している
  15. 点数は「診断」であって「治療」ではない
  16. そして「低評価社員を特定すればいい」という考えにも問題がある
  17. ここで直前の「AIを攻略する社員」がそのままつながる
  18. では年次評価を完全廃止すればいいのか?
  19. だから廃止すべきは「年次評価」ではなく「年次評価への全部盛り」
  20. 例えば4階建てにしてしまう
    1. 第1層:日常
    2. 第2層:四半期
    3. 第3層:半年
    4. 第4層:年間
  21. AIを使うなら「第0層」に置くのが一番良いのでは?
  22. ここでAI上司の記事の結論とも一致する
  23. ただしAIが集めるデータが増えすぎると監視問題になる
  24. 「測れない成果」は年次評価でもAI評価でも消えやすい
  25. 完璧な評価制度はおそらく存在しない
  26. なぜ企業は役に立たないと分かっていても年次評価を続けるのか?
  27. 年次評価は「社員を育てる制度」というより「組織を管理するための儀式」なのでは?
  28. つまり制度の目的が違う
  29. 「社員を分類する制度」と割り切れば、年次評価にも意味がある
  30. これは、管理職の価値を再定義する話でもある
  31. しかし会社がそのAI効率化で管理職を減らしたら元も子もない
  32. 記事解剖室としての結論
  33. だからこの記事は実は「年次評価」の話だけではない

年次評価の最大の問題は「年1回」であることではない

もっと根本的には、一つの制度に目的を詰め込みすぎていることだと思います。

普通の人事評価には、少なくとも5種類の目的があります。

① 査定

この社員はどのくらい成果を出したのか。

② 報酬決定

給料・賞与をいくらにするのか。

③ 昇進判断

誰を管理職にするのか。

④ 人材育成

本人の弱点をどう改善するのか。

⑤ 証拠・記録

会社として過去にどう評価してきたのかを残す。

こうやったAIに指摘されて私は初めて気づいたんですが、コレ、全部性質が違うんですよね(-_-;)

それを「では12月15日午後3時から1時間、人事評価面談をします」で全部処理しようとしている。

無理だ、こんなのort

特に「査定」と「育成」を同時にやることには構造的な矛盾がある

例えば上司から、「今日はあなたの弱点について率直に話してください」と言われたとします。

しかしその面談が、来年の給料と昇進を決める面談でもあったらどうでしょう。

社員:「実はこの仕事が苦手で……」とは言いにくい。

なぜなら、弱点を正直に言うと低評価になるかもしれないから。

社員は当然、自分を良く見せようとします。

つまり育成面談では正直さが必要なのに、査定面談では自己防衛が合理的。

同じ面談で両方をやろうとする時点で無理だとAIに言われるのも納得というものです(-_-;)

これは「能力を隠す社員」とまったく同じ構造

ここで過去記事につながります。

「なぜ有能な社員ほど能力を隠す組織が生まれるのか?」では、

能力を見せる
↓
仕事が増える
↓
見返りがない
↓
能力を隠す

という行動を考察しています。

なぜ有能な社員ほど能力を隠す組織が生まれるのか?仕事が早い人が損をする組織の構造
仕事が早いほど仕事が増え、報酬は変わらない。そんな職場では、有能な社員ほど本当の能力を隠す方が合理的になります。能力隠しが起きる組織の構造と、その副作用を考えます。

年次評価でも同じです。

会社:「率直に課題を話してください」

社員:「課題を話すと低評価になるかもしれない」

なら、課題を隠すのは非常に合理的です。

つまり制度が社員へ、本音を言ってくださいと言いながら、【本音を言うと損をするかもしれない】というインセンティブを与えている。

これは制度設計として矛盾しています。

「働いているフリ」も年次評価によって強化される可能性がある

人事評価の時期が近づく、すると社員は一年分の成果を書く。

当然、自分がどれだけ頑張ったかをアピールします。

これは悪いことではありません。

しかし会社側が、本当に価値を生み出した人ではなく、価値をうまく説明できた人を評価してしまう可能性があります。

すると、実際に成果を出す能力とは別に、成果を「評価者から見える形」に加工する能力が重要になります。

これは記事解剖室で考察した、「働いているフリ」「成果を出しているフリ」「AIに評価されるフリ」に通じるものがあります。

年次評価には「一年分の自分を演出するゲーム」という側面がある

例えば社員A。

本当に重要な仕事を地道にやった、しかし成果を記録していない。

社員B。

重要度はそこそこ。しかし、

  • メール
  • 数字
  • 成功案件
  • 周囲からの評価

をきちんと保存している。

年末。

社員A:「今年何やったっけ?」

社員B:「売上+15%、改善提案8件、プロジェクト4件……」

当然Bの方が評価しやすい。すると社員は学習します。

良い仕事をするだけでは足りない。

          ↓

評価されるための証拠も残さなければならない。

これも一定程度は必要です。

問題は、評価制度が強くなりすぎると、

仕事をすることより、仕事を評価可能な形へ変換することへ時間が使われるようになることです。

ここで「成果主義なら解決するのか?」の記事が戻ってくる

記事解剖室ではすでに、成果主義にすれば「働いているフリ」がなくなるのか? を考察しています。

成果主義なら「働いているフリ」はなくなるのか?
時間ではなく成果で評価すれば「働いているフリ」は消えるのでしょうか。成果主義のメリットだけでなく、数字の攻略や短期成果偏重など、新たに生まれる問題を考察します。

そこで出した結論は、半分は解決する。しかし残り半分は別の問題に変わる、でした。

時間を評価する→時間を演出する→成果を評価する→成果指標を演出する。

今回のBusiness Insiderの記事を加えると、年次評価を廃止して頻繁な評価に変えるだけでも同じ問題が起こり得ます。

「年1回」を「毎週」にしたら本当に幸せなのか?

ここはBusiness Insiderの記事への重要な反論になります。

記事では頻繁なチェックインをかなり肯定的に扱っています。

週次・隔週の人間的な対話の方が成長につながりやすいという主張です。

私はこれにはかなり賛成します。

ただし、チェックインと評価は分けなければ危険だと思います。

例えば毎週、

上司:「今週の成果を報告してください」→点数化→記録→昇給査定へ反映

となったらどうでしょう。

年1回のストレスが、年52回に増えたという悪夢が爆誕します(-_-;)

「頻繁なフィードバック」と「頻繁な査定」は全く違う

ここは明確に分けた方がいい。

良い頻繁なフィードバック

「何か困ってる?」

「この仕事どう進める?」

「ここ手伝おうか?」

「次はこうすればもっと良くなる」

これは育成です。

一方、

頻繁な査定

今週73点。

先週78点。

部署内14位。

昇進可能性34%。

これは監視です、似ているようで全く違います。

Business Insiderの記事が本当に推しているのも、後者ではなく前者です。

「静的な判定・点数付け」から「動的な注意・支援」へ変えるべきだという趣旨です

ここでAIが登場する

HubSpotではAIを使った社内ツールが、

  • 通話
  • Slack
  • 文書
  • カレンダー

などから社員の活動をまとめ、本人が確認・編集して管理職へ提出できる仕組みを使っています。

目的は評価文書を書く手間を減らし、会話そのものへ時間を使うことです。

これは非常に良いAIの使い方に見えます。

「AIが評価する」のではなく「AIが記憶する」

年次評価最大の欠点の一つは、上司も社員も半年前のことを覚えていないことなんじゃないか、と私は個人的に思っています(-_-;)

ならAIに、「この一年、この人は何をした?」を整理してもらう。

AI:3月:A案件 5月:B改善 7月:新人教育 10月:重大トラブル対応。

とまとめ、人間が判断する。

これはAI上司の記事で考えた、AI=事実整理、人間=文脈判断という分業と似ています。

ところがBusiness Insiderは、その逆の未来も警告している

記事の後半では、

社員:

AIに自己評価を書かせる。

管理職:

AIに評価文を書かせる。

AI同士:

文章をまとめる。

という状態になれば、

誰も評価プロセスに責任を持たない

という問題を指摘しています。

記事中では、AIによって「コピー&ペースト型の評価者」が増える懸念も述べられています。

これ、かなり面白いです。


AIによって「意味のない評価制度」が猛烈に効率化される可能性がある

例えば現在、

社員:自己評価を書くのに2時間。

上司:評価文を書くのに2時間。

人事:取りまとめ1時間。

合計5時間かかっていたとしましょう。

ここでAIを導入するとどうなるか?

社員AI:自己評価完成10秒。

上司AI:評価完成10秒。

人事AI:集計完了。

効率化という意味では良いでしょう、しかしそもそもその評価が役に立っていないとすれば何の意味があるのか(-_-;)

「AIは仕事を楽にするのか、それとも『楽な仕事』だけを奪うのか?」では、

AIによる効率化が、必ずしも社員の負担軽減にはならない

と考察しました。

AIは仕事を楽にするのか、それとも「楽な仕事」だけ奪うのか?
AIは仕事を楽にするのか、それとも「楽な仕事」だけを奪うのか考察しています。

「AIで仕事が早く終わった時間は誰のものか?」でも、

AIで効率化した後、その利益をどう配分するかは別問題

と考えました。

AIで仕事が早く終わった時間は誰のものか?
AIで仕事が早く終わった時間は誰のものか、というタイトルで考察しています。

今回も全く同じです。

AIによって、評価文を書く時間が80%減った。

その80%を、社員との対話に使うのか。

それとも、管理職の人数を減らし、一人当たりの部下の数を増やすのか。

どちらになるかは、AIではなく会社が決めます。

管理職不足の記事とも強くつながる

「誰も管理職になりたがらない会社は、最終的にどうなるのか?」では、

管理職不足→一人の管理職が見る部下増加→育成時間減少→問題増加→管理職負担増

という悪循環を考察しています。

誰も管理職になりたがらない会社は、最終的にどうなるのか?
責任は増えるのに待遇は見合わない。そんな状態が続けば、管理職候補は減っていきます。管理職になりたくない人が増える理由と、その結果会社に何が起きるのかを考察します。

Business Insiderも、現在の中間管理職はすでに忙しくなっており、社員教育へ割ける時間が減っていると指摘しています。

これはかなり重要です。

年次評価が機能しない最大の理由は「管理職に一年間育成させていない」ことでは?

少し極端に言えば、

会社:一年間ほぼ放置→12月

「では今年の成長について話しましょう」

となっているわけです。

それで、

社員:成長できていません。

会社:評価C。

……世にも奇妙な物語の完成です(-_-;)

本来は、

1月:困りごと確認 2月:改善支援 3月:フィードバック。

……

12月:「かなり成長しましたね」

となるべきでは?

つまり評価制度以前に、マネジメントが一年間存在していたかが問題です。

これは「評価」と「マネジメント」を混同している

会社には、社員を評価した=社員を管理したという錯覚があるのかもしれません。

しかし、体重計に乗ることと、ダイエットを支援することは違います。

年末に、「あなたは去年より5kg太りました」と言われても、それは知っています。

となります。

必要なのは一年間、食生活、運動、睡眠などを改善する支援です。

人事評価も同じでしょう。

点数は「診断」であって「治療」ではない

これがBusiness Insiderの記事の一番重要なところだと思います。

会社は、社員A:4点 社員B:3点 社員C:2点 と分類する。

しかし会社が本当に欲しいのは、A:4→5 B:3→4 C:2→3

という具合に成長することではないでしょうか。

であれば重要なのは、点数の精密さではなく、どうやって一段上げるか。

そして「低評価社員を特定すればいい」という考えにも問題がある

もちろん、成長支援ではなく、人員整理のための評価制度という会社もあります。

1980年代にはGEのJack Welchで知られる「rank and yank」のように、低評価層を退出させる強いランキング型制度も広まりました。Business Insiderもこの歴史を取り上げています。

しかしすでに考察しているように、

評価制度が処罰装置だと理解されれば、社員は評価制度を攻略する

ようになります。


ここで直前の「AIを攻略する社員」がそのままつながる

AI評価:下位10%は危険

社員:下位10%に入らなければいい

すると目標は、会社に最大限貢献するではなく、他人より少し良い数字を作るになります。

さらに、同僚を助ける→同僚の評価上昇→自分の相対順位低下。

なら、助けない方が合理的。

最悪の場合、他人の成果が下がる方が自分に有利となります。

評価制度が会社内部に競争を作りすぎると、組織全体には逆効果です。


では年次評価を完全廃止すればいいのか?

ここで私はBusiness Insiderの記事より少し慎重です。

育成手段としての年次評価は、かなり弱い。

これはその通りだと思います。

しかし、年に一度正式に振り返ること自体には意味があります。

なぜなら、

  • 昇給
  • 昇進
  • 配置
  • キャリア
  • 長期成果

は、どこかで正式に整理する必要があるからです。

日常フィードバックだけだと、今週のことばかりになり、この一年でどう成長した?

という長期視点が消える可能性もあります。

だから廃止すべきは「年次評価」ではなく「年次評価への全部盛り」

私はこう考えます。

今:年次評価

=成果評価
+育成
+昇給
+昇進
+キャリア相談
+フィードバック
+記録

これを分解する。


例えば4階建てにしてしまう

第1層:日常

週次・隔週。

上司:

困っていることは?

何を手伝えばいい?

これは支援。

点数を付けない。


第2層:四半期

3か月に一回。

何を達成した?

目標は変わった?

次の3か月どうする?

これは軌道修正。


第3層:半年

給与。

昇進。

役割。

正式な人事判断。

これは査定。

育成面談とは分離する。


第4層:年間

一年間で、

何ができるようになった?

来年どういう仕事をしたい?

3年後どこへ行きたい?

を見る。

これはキャリア設計。

こうすると、それぞれの面談目的がかなり明確になります。

AIを使うなら「第0層」に置くのが一番良いのでは?

私はAIを、評価者ではなく、記録・整理担当に置くのが良いと思います。

年間を通じて、

  • 担当案件
  • 成果
  • 改善
  • 教育
  • 顧客評価
  • 問題対応

などを整理し、「この3か月でこういうことがありました」と本人と上司へ提示する。

本人:「これは違います」

と修正できる。

そのうえで人間同士が話す。

HubSpotのAI活用は、かなりこの方向に近いです。

ここでAI上司の記事の結論とも一致する

「AI上司は人間上司より公平なのか?」では、

AI=事実整理・一貫性

人間=事情・例外・責任

という分業が現実的ではないかと考察しています。

AI上司は人間上司より公平なのか?
AI上司は人間上司より公平なのか考察しています。

人事評価も同じでしょう。

AI:過去一年のデータを忘れない。

人間:なぜそうなったのか考える。

社員:間違いを訂正する。

という三者構造。


ただしAIが集めるデータが増えすぎると監視問題になる

ここにも罠があります。

AI:Slack、メール、会議、PC、電話、全部解析。

社員:常時監視されている。

となる。

これは「AI上司は公平か?」や「AI攻略」の記事で出てきた問題そのものです。

データが多ければ評価が公平になるとは限りません。

むしろ、測れるものだけが過剰なる危険があります。

「測れない成果」は年次評価でもAI評価でも消えやすい

記事解剖室の管理職記事でも扱っていますが優秀な人には、

問題を解決する人

だけではなく、

問題を起こさない人

がいます。

新人が辞めなかった、事故が起こらなかった、顧客が怒らなかった、同僚同士が揉めなかった。

こうした成果は記録に残りにくい。

つまり問題は、年次評価だから測れないのではありません。

どんな評価制度にも、「存在しなかった出来事」をどう評価するかという難問があります。

完璧な評価制度はおそらく存在しない

Business Insiderの記事中でも、HubSpotの人事責任者は、万人に完全に満足されるパフォーマンス管理は難しいという趣旨を述べています。

これは大事です。

100%公平で100%正確、完全客観。

……まぁ、有り得ませんよね(-_-;)

で、無理矢理にそんな評価制度を探しはじめると、

評価項目が50個→AI監視→社員が攻略→さらに100項目。

となります。

記事解剖室で色々考察して、何度か辿ってきた道です(-_-;)

なぜ企業は役に立たないと分かっていても年次評価を続けるのか?

Business Insiderは主に、一番楽だから、慣習だから、と説明しています。

記事中では、WhartonのPeter Cappelli氏が、多くの会社では評価制度そのものの効果ではなく「評価を実施したこと」だけが管理されているという趣旨の批判をしています。

これはかなり核心的です。

しかし私はもう一つあると思います。


年次評価は「社員を育てる制度」というより「組織を管理するための儀式」なのでは?

ある会社に、社員1000人、上司100人、部署50が存在していると仮定しましょう。

誰かが、「今年誰が高評価?」「誰を昇進させる?」「誰にいくら賞与を払う?」を決めなければなりません。

すると年に一回、全員を同じ時期に、同じフォーマットで評価する。

これは、会社側の管理上非常に便利です。

社員を成長させるには最適でなくても、組織を一括処理するには最適の可能性がある程には便利。

ここが残り続ける理由ではないでしょうか。

つまり制度の目的が違う

社員:成長したい。

管理職:部下を育てたい。

人事:全社員の評価データが欲しい。

経営:給与・昇進を決めたい。

全員、目的が違うんだよねぇ(-_-;)

だから、私としては

年次評価が失敗しているのは、評価方法が古いからではない。

会社が「社員を育てる仕組み」と「社員を分類する仕組み」を同じ制度でやろうとしているからではないか?

という疑問に落ち着きます。

「社員を分類する制度」と割り切れば、年次評価にも意味がある

例えばですけど、

昇進候補、給与レンジ、人員配置を決める。

これはどうしても必要。

なら、年次査定として残せばいい。

しかし、人を育てる目的は日常のマネジメントへ移すべきなので、ここを分離する。

なのに同じ年次評価制度を使っているから誰にも満足されないんじゃないかなぁ、と思います。

これは、管理職の価値を再定義する話でもある

AI時代になると、報告書作成、集計、勤務記録、評価資料整理はAIが代替できるようになるでしょう。

すると人間管理職に残るのが、部下へ注意を向けることになります。

Business Insiderの記事が「regular, human attention」を重視するのは、この意味で非常に示唆的です。

これは、AI時代に管理職は不要になるというより、AIによって管理職から事務仕事を外し、本来のマネジメントへ戻せるという可能性を示しています。


しかし会社がそのAI効率化で管理職を減らしたら元も子もない

もうこれは以前の記事でも何度か書いていますし、この記事でも前述しているので、あえて書かなくても良いでしょう。

事務作業をAIで減らすことで管理者の負担を軽減したのに、さらに業務を増す方向にすれば、

AIで評価制度を改善したはずなのに、社員への人間的なフィードバックがさらに減る。

という皮肉が起きます。

生産性向上分を誰が受け取るのか

という問題です。

記事解剖室としての結論

Business Insiderの記事の主張、

「年次人事評価は廃止した方がいい」

には、かなり説得力があります。

特に、

  • 一年分をまとめて評価する記憶問題
  • フィードバックが遅すぎる
  • 査定・育成・給与を一度に扱う
  • 管理職の事務負担
  • 社員への心理的負担

という批判は妥当でしょう。

ただし、記事解剖室として一段深く考えるなら、

問題は「年1回」であること以上に、「評価すること」と「育てること」を同じものだと思っていること

ではないでしょうか。

社員の力量を正確に分類できたとしても、5点満点で2点の社員が来年も2点なら、会社全体の能力はほとんど上がっていません。

逆に多少評価が曖昧でも、2→3、3→4、4→5という感じで社員を成長させられるなら、会社にとっては大きな価値があります。

だから理想的なのは、

日常:支援する

四半期:方向を修正する

半年:給与・昇進を判断する

一年:キャリア全体を振り返る

そしてAIには、

点数を付ける役割より、一年間の事実を忘れず整理する役割

を与える。

このくらいに分業すべきではないかと。

何より、

評価の目的は「誰が優秀かを決めること」だけではなく、「社員が来年もっと良い仕事をできるようにすること」

であるはず。

Business Insiderの記事は、そこを忘れた年次評価が「儀式」になっていると批判している。

そして記事解剖室でこれまで考えてきたことまで含めると、さらに一歩進んで、

評価制度とは社員を測る物差しではなく、社員がどう行動するかを決めるインセンティブ装置でもある。

と言えるでしょう。

悪い評価制度なら、働いているフリを生む。

能力隠しを生む。

成果指標攻略を生む。

AI攻略を生む。

良い評価制度なら、本当に価値のある仕事をした方が本人にも得になる。

結局、年次評価を廃止するかどうかよりも重要なのは、

「この会社では、どんな行動をした社員が報われるのか?」

を設計し直すことなのだと思います。

だからこの記事を記事解剖室で扱うなら、

「年1回の人事評価が機能しないのは、社員を『評価すること』と『育てること』を混同しているからではないか?」


という結論に落ち着きますね。

だからこの記事は実は「年次評価」の話だけではない

もっと大きく見ると、

会社は社員を測りたいのか、それとも社員を良くしたいのか?

という問いです。

もちろん両方でしょう。

でも、測定することと、改善することは違う行為です。

ここを混ぜたために年次評価が、

点数は付くが、何も改善しない。

という儀式になってしまったのではないでしょうか。

人事評価制度は、社員を測るだけでなく、社員の行動そのものを変える仕組みでもあります。

AIが評価に入ることで、この問題がどう変化するのかを含めた全体像は、「AI時代の働き方はどう変わる?」で考察しています。

AI時代の働き方はどう変わる?雇用・評価・管理職・人材育成から考える
AI時代の働き方はどう変わるのか、雇用・評価・管理職・人材育成の面から考察しています。

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